ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 生ける屍 ( No.216 )
日時: 2010/11/03 17:28
名前: メルー (ID: hdsE90P5)

【第36話】


日本で突如起きたリビングデットは世界でも発生していた。

アメリカ、中国、ロシア……。

多くの大国ではその規模の大きさに対処が出来ないでいた。


ロシアは政府の対応の遅さにほぼ壊滅。

中国は狂人と化した人の多さに対応出来ずに壊滅。

アメリカは幸いにも早期発見 早期対策で狂人の増加は食い止めた。

だが、それでも多くの一般人、警察官が死んだ。


そして 生き残った警察官は次の選択が許された。


最後まで職務を全(まっと)うするか

  もしくは生き残った家族や愛すべき人の元に戻るか……


 — 舞台は日本から離れてアメリカ —


テキサス州のある建物で、緊急招集が行われた。

集まったのは生き残った特殊警察部隊 SWATの隊員。


「諸君。ここまでよく頑張った。」


今 喋っているのはテキサス州の警察のお偉い人。

聞いているSWATの隊員は全員用意された椅子に腰掛けている。


「諸君の頑張りで多くの命が守られた。…だが、守れなかった命もある。」


皆 無言で話を聞く。


「しかし、結果がどうでありここにいる全員が命を賭(と)したのは言うまでもない。だから、今 ここで諸君に許可を出す。」

お偉い人が言葉を溜(た)める。

「もし帰りたい場所があるなら帰るが良い。誰もこの先の事について無理強いはしない。だから、帰りたい隊員は今 挙手しろ。もちろん裸で帰したりはしない。装備一式も渡すぞ。」

「……」


誰も手を挙げない。


全員 迷っているのだ。


愛すべき人がいて 守りたい人がいる から。


「今 言わないとこの先 逃げるのは許されないぞ。」


「……」


一部の人が隣の人と顔を合わせる。

多くの人はこういう場合 一番に名乗りを上げるのを嫌がるものだ。

だが このままで職を続ければ殉職するのは絶対。


  誰かが最初に手を挙げれば……


一部の人がそう思い始めた時、

  — スッ —

誰かが右手を真っ直ぐに挙げた。


お偉いさんがそれに気付いて その手を挙げた者の名前を呼ぶ。


「Mr.カンザキ。」


 神崎


名前を呼ばれた男は椅子から立ち上がる。


髪は黒く 瞳も黒い。