ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 生ける屍 ( No.25 )
日時: 2010/09/07 18:21
名前: メルー (ID: UFZXYiMQ)

【第8話】

「う、嘘……」

龍宮がその場で崩れる。

「……」

俺と工藤は喋る気すら起きない。

それほど、屋上からの眺めは最悪で見ないほうがマシだった。

『あぁぁぁ!』

『うあぁぁ!』

校庭には、ほぼ全生徒と言っても過言ではないほどの生徒が群がっていた。

  —— 狂人と化して ——

「神隠しなんかじゃなかったんだな。」

「もう全員……狂い始めてたんだ…」

「私達も……あんな風になるの?」

龍宮が声と肩を震わして尋ねる。

少しでも揺らせば泣き出しそうなくらい震えている。

「…分からないよ。」

工藤が言う。

今この場で、絶対に生き残れる!なんて言っても意味は無いだろう。

でも、

「だけど、俺達はまだ生きてるんだ。努力する価値はあるんじゃないかな?」

工藤の言うとおり、諦めるには早過ぎる。

諦めるのは努力してからの話だ。

「…うん…そうね。私達はまだ生きてるのよね。」

「もちろん。」

龍宮は立ち上がり、深呼吸する。

そして、笑顔で、

「なら、早く職員室に行きましょう!まだ、私達以外にも生き残りがいるかもしれないんだから!」

「萌の言う通りだ。神崎?」

「?どうした?」

「お礼がまだだと思ってな。」

「お礼?」

「あぁ。神崎が俺達を呼んでくれなかったら、俺と萌も……あそこにいたかもしれない。だから、お前はある意味命の恩人に等しいんだよ。」

龍宮も頷く。

「だから、今そのお礼を」

「今はいらねぇよ。」

「え?」

「それは学校から出れた時に聞くよ。」

俺は笑いながら工藤に言う。

「……それもそうだな。」

工藤も笑う。

「じゃぁ、早く職員室に向かいましょう!」

「あぁ。」

「もちろんだ。」

俺達は、改めて生き残る決意をして屋上から職員室に向かった。