ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 生ける屍 ( No.42 )
日時: 2010/09/09 19:25
名前: メルー (ID: EoZogUA7)

【第12話】

「放送室?」

「そう、放送室よ。」

「どういう意味よ?」

「実はアンタ達が来る前に、いくつか試してみたのよ。」

「試した…?何を?」

俺が口を挟む。

工藤も龍宮も由美の言葉に集中する。

「アイツ等の習性をよ。」

由美が校庭にいる狂人達を指差す。

「アイツ等って……あんなのに習性なんてあるのか?」

どう見ても闇雲に敷地内を歩き回っているようにしか見えない。

そして、学校を囲む塀も越えられない。

こんなのに習性なんてあるのか?

「私も最初はそんなもの無いと思ってたわ。でも、試してみたらあったのよ。」

「どんな習性が?」

「まず第一にアイツ等には視覚がほとんど働いてないのよ。」

「視覚?」

「そう。さっき私は試しに紙飛行機をここからいくつか飛ばしてみたのよ。」

由美がガラスの割れた窓に近づく。

「そしたらアイツ等、一切紙飛行機の方を見なかったわ。」

「たまたまじゃないの?」

龍宮が遮る。

「……そうね。絶対とは言えないけど、ほぼ確実と言っても良いと私は考えてるわ。」

「……他にもあるのか?」

「あるわ。二つ目にアイツ等が主に集まるのは音なのよ。」

「音?」

「ええ。視覚が働いてないのなら、どこがその代わりを果たすと思う?」

「…聴覚…」

「当たり。アイツ等はたぶん視覚が不自由な分、聴覚に頼っているのよ。」

「それも試したのか?」

「もちろん。花瓶を落としてみたわ。」

次に由美が指したのは地面で砕け散っている陶器。

おそらく花瓶だった物だろう。

「そしたら、アイツ等のほとんどがそれに反応したわ。」

「…凄いな。でも、それと放送がどう関係するんだ?」

「まだ分からないの?放送で生き残りを呼び出せばいいのよ。」

「呼び出す?」

「そうすればアイツ等は近くにあるスピーカーに近寄るはずよ。」

「けど、ここ(職員室)ら辺にもスピーカーがあるから、そんな事したらここにも集まってくるんじゃないか?」

「バカね。だったら、そこのスピーカーの電源を切ればいいのよ。」

「そうか……」

俺だけでなく工藤も納得した様な顔をする。

龍宮はどこか悔しそうだ。

何を考えてるんだ?

「でも、そこまで分かっていてどうして実行に移さなかったんだ?」

工藤が質問する。

言われて俺も思う。

もし由美がそれを実行してくれれば、俺達ももっと早く来れたかもしれないのに。

「……忘れたの?」

由美が言う。

「何を?」

「あそこで教頭が襲われた事よ。」

「!」

「だから、まだあそこには教頭と校長がいるのかもしれないのよ。」