ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 生ける屍 ( No.5 )
日時: 2010/10/08 17:04
名前: メルー (ID: oKHf8B3C)

【第一話】

いつもと同じ毎日。

雲がゆっくりと流れる青空。

春が過ぎようとするこの暑さ。

まったく頭に入らない先生の話。

これら全てが昨日と何も変わらない。

たぶん明日も変わらないだろう。

  
    ——その時はそう思っていた……


「…先生……」

俺が授業を放り投げて視界に入る雲を数えるという途方も無い事をしている時に、ある女子生徒が立ち上がる。

「?どうかしたのか?」

クラス全員の視線がそいつに向く。

当然、俺の視線も。

「…気分が…悪いです…」

確かに、誰が見てもそいつの顔色は悪かった。

「そうか、なら保健室に行っていいぞ。」

「…はい。」

そいつは少しふらつきながら教室から出て行く。

途中、友達から「仮病?」と言われていたが、そっちを見向きもせずに教室から出て行った。

そんだけ気分が悪いんだろうか?

「はい、じゃぁ、授業を続けるぞ。」

先生が再び教室の視線を自分に集める。

当然、俺は再び窓の空を眺めだす。

だけど、すぐに別の考えが思いつく。

「先生。」

思いつくとすぐに俺は立ち上がり、言う。

「気分が悪いです。」

「……」

教室に小さな笑いが広がる。

正直に言えば今の俺は見ての通り健康そのもの。

だが、このままココで過ごすくらいなら保健室で過ごしたほうがマシだ。

「保健室行っていいですか?」

「……勝手にしろ。」

俺は、こうして保健室に向かった。

 
  ——今思えば、すでに地獄は始まっていたのだ……