ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 生ける屍 ( No.57 )
日時: 2010/09/21 19:23
名前: メルー (ID: OldIND5q)

【第十七話】

「ぎゃぁぁぁ!」

先輩が噛まれながら後ろに倒れ、狂人を引き離そうともがく。

他の人が知ってるかどうかは知らないが、俺はこいつらの力の強さは知っている。

おそらく先輩一人の力では無理だろう……

「あぁ……あ…」

先輩もそれに気付いたのか、後ろで眺めている俺達に手を伸ばす。

「た…たすけ……」

しかし、誰も動かないまま時間は流れ、

「おね……たの…む」

その言葉が途切れるのと同時に、空を掻いていた先輩の手も床に落ちる。

「アアァァ…ァア…」

狂人は息絶えた先輩の肉を食いちぎる。

「もう時間が無い!アイツ等が増える前に早くココから出よう!」

俺がそう言うと由美と龍宮が頷き、ハシゴの準備を始める。

まだアイツは先輩を貪るのに夢中だから今なら逃げれる。

 はずだったが

「アアァァァ……」

扉の向こうからアイツ等が次々に現れ始めた。

「どういう事だ?」

工藤が驚きながら呟くと、

「あそこで息絶えたバカの悲鳴で集まったんだろ。」

如月先輩が本多先輩の死体を見下しながら言う。

なるほど、さっきの悲鳴のせいか……

これで理由は分かったが、早くどうにかしなければ生き残れない!

ハシゴの準備はまだなのか?!

龍宮達を見るとまだ完成してはないらしく、悪戦苦闘をしている。

こうなると俺達に出来るのは、アイツ等を止める事。

「影璃!止めるぞ!」

「はい!」

「!?」

俺がアイツ等を止めに行こうとすると、それより早く南瀬先輩と如月先輩がそれぞれの武器を持って飛び出した。

「はっ!」

「はぁ!」

2人は爽快とも言える速さで狂人達を潰して行く。

南瀬先輩は槍で首を突き刺し、薙ぎ払う。

如月先輩は木刀で頭を砕き、間髪いれずに蹴り飛ばす。

同じ様な姿をした2人が戦う姿はまるで舞っている様で、自然と目が釘付けになってしまった。

「真っ!準備できたわ!」

「!」

心を奪われていた俺は龍宮の声で我に帰る。

「分かった!じゃぁ、まず俺が安全を確認しに降りる!」

「うん!」

龍宮と由美が立っている場所から退き、俺に譲る。

俺は窓から下を見る。

まだアイツ等は集まってはいない。

今なら行ける!

俺が覚悟を決めて降りようとした時だった、

「どけっ!!」

「!?」

俺は横から急に出てきた人に弾かれた。