ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 生ける屍 ( No.66 )
日時: 2010/10/01 19:45
名前: メルー (ID: FQc4ogfY)

【第十九話】

「本当にアレで教師なのか?」

俺の怒りの収まらない言葉に、由美が答える。

「そんなに憎いなら殺せば良いのよ?」

「殺す?今から下に降りて、追い掛け回すのか?」

「いいえ。もっと簡単な事よ。」

「?」

「今 アイツが降りてるハシゴはコノ窓枠に固定されてるのよ。」

「つまり?」

「つまり……このハシゴを固定しているネジを外せばいいのよ。そうすればアイツはハシゴと一緒に地面に落ちて、ハシゴが立てる音に集まってきたアイツ等に喰われて死ぬわ。」

「……」

俺は口が動かなかった。

今 あのクソ野郎の命が俺の手中にあるという事実に驚いたせいでもあるし、そんな事を思いつく由美に恐怖を感じたせいでもある。

「どうするの?早くしないと降りちゃうわよ?」

由美が俺を急かす。

そして 俺は、

「……やめておくよ。今 ハシゴを落としたらここから出るのが大変だからな。」

「……そうね。」

俺の言葉に、由美は微笑み、工藤と龍宮も安心した様な顔をする。

なんだか 試されていたような気分だな。

「そろそろ私達の番よ。」

龍宮の言葉に反応して、下を見ると、確かに半田が地面に立とうとしていた。

「なら、さっき言った様に俺が最初に」

「待て。」

俺の確認の言葉を工藤が遮る。

「今度は何だ?」

「先生の様子が可笑しい。」

「?」

工藤の言ったとおり、先生は地面で何かを拾っている。

「何をする気だ?」

俺の疑問。

「石を拾ってるのか?」

工藤の疑問。

そして、

「石…?……まさか!アイツ!」

由美の頭で閃くのと同時に、半田が拾っていた石を窓に投げつけた。

 —— ガシャーン ——

当然 窓ガラスは大きな音を立て割れた。

その窓ガラスは俺達の真下の窓ガラス。

「アイツ……私達を囮にする気ね!」

由美の言葉に俺達も気付いた。