ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 生ける屍 ( No.97 )
日時: 2010/10/03 17:14
名前: メルー (ID: hFRVdxb.)

【第二十三話】

「一番近い玄関はどこだっけ?」

俺は隣を歩く工藤に尋ねる。

「一年の俺達が使ってる所じゃないかな?」

「なら、そこから出よう。」

「あぁ。」

俺は歩く速度を少しだけ上げる。

だが、絶対に走らない。

なぜなら、

「アァァ……」

走ると、その足音に反応して近くにいる狂人が集まり始めてしまうからだ。

だから、声も限界まで小さくしている。


俺達は一階へ降りる為に階段まで歩く。

すれ違う狂人に気づかれないように願いながら。

職員室からの距離で言えば三十メートルぐらい。

今まででこんなに三十メートルが長い距離だなんて気付かなかった。

数分かかってようやく階段に着いた。

俺は後ろにいる南瀬先輩を見る。

南瀬先輩は俺と目が合うと頷く。

多分 『大丈夫』 という意味だろう。

俺も先輩に頷いてから、今度はゆっくりと階段を降り始める。

階段は廊下と同じ様に 汚れて いた。

まだ新鮮さを欠いてない紅い血が階段に小さな池を作り、生々しい肉片がそこらじゅうに飛び散っている。

本当なら足をつけたくはないが、避けることも出来ず俺は血の池に足を入れる。

 —— …チャプン… ——

小さいが音が出る。

俺は止まって周りを見る。

アイツ等は今の音には反応しなかったらしく、まだ闇雲に動いている。

俺は小さく息を吐き、前に進む。

工藤も続き、後ろの龍宮と沖野も諦めて足を入れる。

だが、由美が問題だった。

由美は血の池を前に止まり迷っていた。

足を 入れるか 入れないか?

当然 入れなければ前には進めない。

俺は由美を急かす。

こんな所で無駄な時間を使っている場合じゃない。

由美は そんな俺を見て観念して足を入れようとするが、足が血に付く手前でまた足を引っ込める。

そして 由美の次の行動を見て俺は目を疑った。

由美が膝を曲げた。

飛び越える気か?!

確かに大きさ的には飛び越えれる大きさだが……

俺は危機を感じて由美に止(や)めるように手を動かす。

俺に気付いた如月先輩が由美を見て止(と)めようとするが、間に合わなかった。

由美は曲げた膝を伸ばし、池を飛び越えた。

そんな由美が着地する床には——
  
      ——真っ赤な小さな肉片が転がっている。

その小さな肉片に気付かないまま由美は着地して肉片を踏む。

そして 由美は足を滑らして後ろに倒れた。

俺は由美の腕を掴もうと自分の腕を伸ばしたが届かず、由美は血の池に尻餅をついた。

「きゃ!?」

 —— パシャーン ——

由美の悲鳴と血が飛び散る音が一瞬 学園中に響き、その後に聞こえるのは、

「アアァァァ!」

「ァ…アアァ…」

狂人が俺達に気付き、近づいてくる音。