ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 『━X━ WORLD』 ( No.1 )
- 日時: 2010/09/04 21:26
- 名前: 遊太 (ID: U3CBWc3a)
0話【プロローグ】
東京
「担架急げ!!!重傷者だ!!!!」
真昼間の東京の街、40階建ての高層ビル35階から燃え盛る炎が湧き出ている。
原因は不明だが、何らかの事故で火事が起きたらしい。
無論、消防車が届くはずもなく、消火活動は困難している。
地上に集まる群衆を掻き分け、1人の少年がビルに近づこうとする。その直後だった。
「君!!危ないから離れて!!!!!」
「パパとママがいるんだよ!!!助けて!!!!」
少年の言葉で、少年を止めていた警察関係者の顔色が変わる。
スーツを着た男は少年の目をじっと見つめると、スーツを脱いでビルの中へと駆け込んで行った。
─────────
10年後
世田谷区に住む天宮優太は、1階のリビングにある仏壇の前に座っていた。
仏壇には優太の母、父が笑顔で写っている写真が飾られてある。
「父さん、母さん。今日も。」
あの火事から10年経ち、両親を失った優太は高校生になっていた。
国から特別に補助金を受け取り、どうにか生活を繋いでいる。
優太が6歳の頃に起きた火事の原因は、何者かの放火によるものらしいが、それが真実か分からない。
当時の警視庁では捜査本部を立て懸命に調べたが、現場は消火活動の遅れで何も残っていない。
死亡者6名という悲惨な結果に終わり、4年後には捜査本部も無くなり、事件は迷宮入りで終わった。
「行ってきます。」
誰もいない自宅に告げると、優太は自身が通う高校へと急いだ。
*****
「例の10年前の火事、あれ放火でも意味が異なりますね。」
東京に建つ超高層ビル‘第7ビル’の最上階である50階。
壁が窓張りで東京の街を見下ろせる社長室に、若い男性と福与かな老人がいた。
「・・・・というと?」
「私の部下が調べたところ、あの火事は何かを揉み消すための犯行。殺人目的ではないようです。」
若い男性の言葉に、この会社の責任者である城野竜二郎は何度か頷く。
立ち上がり振り向いて、窓から東京の街を見る。
若い男性は手に持つ資料を続けて読み上げる。
「それで、死亡者6名の中に能力者がいることが判明しました。宮田総、当時40歳の社員です。」
「能力者か・・・。彼の詳細は?」
「現在調べている途中です。10年前の事件なので、どうにも進み具合が悪く・・・・」
「分かった。発展があったら連絡を頼む。」
城野の言葉に若い男性は頷くと、一礼して社長室を出て行った。
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