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Re: 『━X━ WORLD』 ( No.3 )
日時: 2010/09/05 14:14
名前: 遊太 (ID: U3CBWc3a)

1話【天宮優太】


東京世田谷区  桃崎学園高等学校


この学園に再び桜が咲く時期が来た。
学園の周りはピンクの花びらで綺麗に染まり、その中を生徒たちが次々と通っていく。
門を抜け、「コ」の字の形をした校舎も、どこかあたしい雰囲気を漂わせている。
「優太、おはよう。」
「ん・・・?あ、おはよう七海。」
門を抜けた優太の後ろから、中学からの知り合いである加藤七海が声をかけてきた。
ショートヘアーが似あう七海は、学園トップの成績を誇る女子生徒である。
「優太、今度の学園祭なにするか決めた?」
「俺は生徒会だから、警備係なんだ。」
「え!?ずるっ!!!」
優太の言葉に、思わず大声を出した七海。表情は不貞腐れている。
優太は高校1年生の時に生徒会執行部に入部し、現在は風紀委員長を務めている。
「じゃあ俺、生徒会室でミーティングあるから。」
「後でね〜ぇ。」
七海と別れると、優太は東館という3年生校舎に入る。
そして、3階にある生徒会室へと急いだ。



東館3 生徒会室


どうやら、優太が一番に来たようだった。
生徒会室のドアを開けると、誰の姿も見えず、ただ窓から気持ちの良い春の風が入ってくるだけだった。
部屋の中央の置かれた細長い業務用の机に、パイプ椅子が向きあうように10脚。
生徒会の人間が現在10人いることが分かる。
生徒会長、副会長、総務委員長、書記、環境、風紀委員長、役員4名。
優太はその内の風紀委員長を務めている。
無論、仕事はその名の通り風紀の乱れを無くすことだ。
優太が何気に部屋へ入ったその直後だった。

ドゴッ!!!

部屋に鈍い音が響き渡り、優太の後頭部に鈍器が叩きつけられた。
「痛って・・・・・」
あまりの痛さに、優太は持っていた鞄を離してその場に崩れ落ちる。
床に倒れた瞬間、意識は簡単に途切れてしまった。

「案外弱いんだね。超能力者♪」

優太の後ろから、この学校の制服ではない制服を着た1人の女子が入ってくる。
腰まである茶髪の長い髪に、どこか大人の雰囲気を漂わせながら、優太の隣にしゃがみ込む。
「天宮優太、確保。これより本部に帰還します。」
謎の女子生徒はそう言うと、優太の背中に右手を置き、ゆっくりと目を閉じる。
そして、その直後に2人は一瞬でその場から姿を消したのだった。


************


『呼び出しです。2−2組、天宮優太君。直ちに生徒会室へお急ぎください。もう一度繰り返します。』


校舎に響き渡る放送部員の声。2−2で放送を聞いていた七海は表情を変えた。
「あれ・・・?優太、何してんの?」
七海は首を傾げながら、向かいの東館を見る。
すると、生徒会室のある3階に、なぜか人が集まっている。
「おい、加藤。優太はどこだ?」
七海が振り向くと、髪をツンツンにワックスで固め、派手な赤色で染め上げた不良の男子生徒がいた。
「それはこっちのセリフ。私だって知らないわよ。」
「あぁ!?お前、優太に何かあったら・・・」
2年生で不良の頭とも言われている結城隼人は、なぜか優太のことを心配している。
七海が隼人と出会ったのは中学校が初めてだが、優太は幼稚園から知っている。
七海にはそれしか分からないが、どうやら2人は過去に何かあるらしい。
「俺、東館行ってくる。」
「あ!!私も行くよ!!!!!」
七海はそう言うと、隼人と共に東館へと向かった。