ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 音符的スタッカート! ( No.1 )
- 日時: 2011/07/26 19:54
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: wzYqlfBg)
「うぐひいいいいいいいいいい」
ばりばりばり、と自分の爪が頭皮を掻き毟る。ずさささささ、とカーペットの上を砂だらけの足裏が滑る。うぃんうぃんうぃん、とエアコンが冷気を吐き出す。そして最後に、パソコンが某ウイルスをバスターするソフトを稼動させるため、機械的な音を発した。
「あーうーあー……何でーだーよーうっ!?」
目の前の真実をもう一度確認しようと、土で汚れた右手でマウスを包む。クリックするは「今回の受賞者」と表示されてある青字。ただの矢印が一旦人の指マークになった後、勢いよく2連打した。某ウイルス(略)が動いているせいか、画面の変わる速度がやけに遅い。あーイライラすんじゃねぇかこのパソコンちゃんは、と思い切りハードディスクの横っ面を叩いた。…………八つ当たり、ダメ、絶対。
「ふー、はー、すいー! ……よし、今度はちゃんと見よう…………」
お、ようやく画面が変わる。デコレーションが施された可愛らしい文字で、その名は人の目に晒されていた。隣には、タイトル。明らかに人間の視力を考慮していない背景と共に、同じような項目が3つ程、私の眼球に焼きついた。
「………………………………」
しゅーうちゅう! びかっ、と心眼みたいなものを開眼してみた。無理だけどね! だってアタチただの女子高校生だもん! ……自己嫌悪に陥った。
そんな自身との戯れ(妄想とはいわせない)をしつつ、私は沈黙を守り、青く光る3つの項目を見つめた。まるで、品定めでもするかのように。1つに10秒も20秒も30秒もかけるように。もしかしたら、1分も経っていないかもしれないけれど。だけど私にとって、エアコンとパソコンの稼動音しかしないこの時間は、とても長く感じられた。
だけど、その時間もやがて終わる。
「……な、無い…………」
分かりきっていたことを、たった2文字に代えて虚空へと飛び出させた。限りない脱力感と空しさが、私の体中を支配して叫び声をあげる。さっきまで頭皮を削っていた指先で、今度は眼球辺りを覆い被せた。
「……また、かぁ……うー……くっそ……」
泣けよ。泣いちゃえYO! でもね、泣けないんだよねー、ん? 実はそんなに悲しくないよーだってこんなの(多分)日常茶飯事ですもの! 受賞できなかったから何? ネット内ぢゃん! でもそのネット内でも人のコメントに一喜一憂してるアタイは何さ!
…………あー、鬱だ。きっと熟年夫婦の決裂時に起こったひびよりも、深く辛い痛みが、私の胸を襲う。溜め息ひとつ、またふたつ。いくら溜め息をついても、ニートという言葉を知らないエアコン様の声には勝てなかった。
「なーんでいつもなれないかなぁ……」
受賞者という立場に。勝ち組という立場に。何故私はなれないのだろうか。理由を誰か教えてくれたまへチミィ。改善する気はさらさら無いけどなチミィ。……部下にちゃぶ台をひっくり返されても可笑しくないな、と1人嘆息した。