ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- KEIKA★な僕1 ( No.105 )
- 日時: 2011/08/15 00:43
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: wzYqlfBg)
- 参照: 長い。長いです。
とにかく。
書いて書いて書いて書いて書いて書いて食べて寝て書いて書いて書いて寝てうろうろして書いて書いてコンビニ行って彼女に怒られて幸せになって書いて詰まってだらだらして電話して彼女が部屋に来て嬉しくてきゃいきゃいして書いて書いて書いてだれて眠くてうつらうつらして殴られて仕事しろって言われてむせび泣いて書いて書いて書いて書いて書いて書いた!
はい、僕の近況終わり! ちなみにこの書いている間に時は新年へと移り変わりました! ザ・ワールドなんて使ってねぇ!
とにかく明けましておめでとうございます今年のジューンブライドはお楽しみにふふん!
「…………つッッッかれた……」
執筆中にため込んでおいたため息は、今日という日の為に用意しておいたのだ。心置きなく二酸化炭素を排出する。ぶはぁ。
ぼふんッと勢い良くベッドにダイブした。もう二週間ぐらいまともに睡眠してなかったので、睡魔に襲われる。あー……眠い。こらえきれられずに、ため息と同じぐらい大きな口を開けて欠伸する。まぶたが重くなってきたところで、「ッはッ!!」とベッドから飛び上がった。きょろきょろといつもと変わらない自室を見渡して——安堵する。
「そっか、僕……書いたんだ……」
ごろりと横になっても、もう誰にも文句を言われない。「あのさァーここまで書くって豪語してたのに書いてないよね、何でェ!?」と切れて殴りかかってくる担当(もとい彼女)は、昨日から僕の原稿を持っていったっきり連絡が来ない。仕事を終えた抜け殻(僕)には興味ないということか。僕の価値は小説だけ? そりゃちょっとっていうかかなり寂しいかも。
——まぁ、色々あったけど。つまりは……
「よ、よーやく小説書けたってことだー」
ちょっと辛いけど、キーを打ちすぎてふるふると微震する両腕を万歳のポーズで固めた。パソコンを使っている間ずっと駆使していた両腕の筋肉はほぼ限界に近い。右手なんてマウスと二刀流だったせいで、血管が浮き出ている。赤黒い色をした右手から目をそらすように(僕はグロが嫌いなんですって)、天井を仰ぎ見た。
「あぁぁぁぁぁー! ……自由、だ」
いつのまにか口元がにやりとひきつっているのを感じて、さらににやり。
昨日の夜。彼女と約束していた賞に応募する作品の執筆が————終了した。つまり、一本の小説を描き終えたということだ。内容についての言及はともかく、書けると見栄を張ったあの日から彼女との結婚式を目標にひたすら疾走また迷走してきたのだ。描き終えた嬉しさと達成感は半端じゃない。
しかも、先ほどから何度も口にしていたように、受賞すれば僕は彼女と結婚出来るのだ。「うわぁ、馬の目の前に人参吊り下げてるもんじゃないか」と他人から見れば嫌悪の対象になるんだろうが、僕にとっては人参と彼女のような女神を一緒にするなと怒ってやりたいぐらいだ。え、論点違う?
「と、とりあえず……メールを……」
うかったらめえるしてねまる、という幼稚園が打つようなメールを急いで送信する。
送信完了しましたの画面を確認すると、僕の意識は真っ暗な闇の中へと沈んでいった。あぁ、眠たい……。
*
「ねぇ、起きて因幡」
——んん、何だろう。僕はまだ寝ていたいのに……。
眠い目を擦りながらベッドから上体だけ起こす。
欠伸を噛みころして顔を上げると、目の前には嬉しそうに笑みを浮かべる彼女が立っていた。目を細めて、寝呆けている僕をおかしそうに見つめている。
「おはよう、因幡」
「え……えっと……? お、おはよう」
返答に疑問符が混じっているのは、けして僕が彼女を見てどうこう思ったからでは無い。
単に————この状況の整理がつかないだけだ。
「あのね……因幡はどっちが好きかな……私、因幡の好きな方にしたいな……」
「ふぇ? 好きな、ほう?」
ぽっと頬を朱に染める彼女。相変わらず可愛い。デッドヒート中のあの般若の形相(般若のような、とはあえて言わない)を忘れさせるぐらいだ。
——は? 僕の好きな方……って何だそれ?
眠りから覚めて間もない僕の目の前で、彼女は上目遣いでもじもじしている。照れているようだ。うわ、可愛い。やっぱり可愛い。小説家らしく多種多様の文章を巧みに使いこなして彼女の可愛さについて語りたいけど、前にも言った通り僕のボギャブラリーは常に言葉の在庫が無いので割愛。一番ポピュラーな可愛いとだけ表現しておく(いやだって彼女のファンが増えたら困以下略)。
——僕の好きな方にしたい。はて、それはどういうことだ?
謎だらけのその言葉をゆっくりと咀嚼しながら、僕の前で照れ照れしている可愛い可愛い彼女を頭のてっぺんから足の先までまじまじと眺める。
やがて、彼女は僕に片手をおずおずと差し出した。その片手には——
「——純白の、ウェディングドレス……だと……!?」
しかもフリル多め。だが露出はきちんとしている。胸と背が適度に開く、清楚なセクシーさを保った——ウェディングドレスだ。彼女は取り出したドレスを「どうかな?」と甘い声で聞いて、ベッドに未だ上半身起こしただけの僕の隣に置いた。ふわりと良い香りが鼻を掠める。僕は彼女の美しさと現状況の素晴らしさにこくこくと首を振るばかりだ。
ところで——ウェディングドレス……だと……(二度目)。ウェディングドレスってのは、つまりアレだ、用途は一つしか無い訳でして。ウェディングって言うからには、結婚式で結婚する人が着るアレな訳でして。んで、その結婚する人は必ずしも女性である訳でして、そんでそんで……!
「それとも因幡が好きなのはこっち、かな?」
「ッッ!? ……それは、日本古来の歴史より伝わる——白無垢、だと…………ッ」
彼女がどこからともなく取り出した白無垢を前にすると、何故かベッドの上で正座になってしまった。恐ろしきかな白無垢の力。
先ほどのドレスとは違い、白無垢はとても清楚できりっとして見える。いつも姿勢が綺麗な黒髪の彼女には、こういう和服も似合うかもしれない。夢が弾む。
拳を握り締めて解説(もとい興奮)している僕の反応を窺っているのかいないのか、彼女はドレスの上に白無垢を重ねた。「どう?」と聞かれる。僕はまた首振り人形のように首を上下に振った。
「因幡、ドレスも白無垢にも何も言わないけど……もしかして、嫌、かな……」
「嫌な訳がないッ! むしろ大歓迎だよ、てか君がそんなに結婚に対してポジティブかつ積極的だなんて——」
- KEIKA★な僕2 ( No.106 )
- 日時: 2011/08/15 17:01
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: wzYqlfBg)
- 参照: 因幡くんにイラッとした人は正常です。
——嬉しすぎるだろう、という言葉をこらえて、僕は至って真面目な表情を作った。ハァハァと荒い息をする僕がこんなこと言ってもただの変態だ。いつもの僕の真摯な雰囲気が台無しではなかろうか。
僕が大声で否定したせいか、彼女は「嬉しい……」と愛しげに「因幡……」と名前を呟き、ごそごそとポケットを探り始めた。もしかして、そこから結婚式の衣装は出てくるのだろうか。何て夢のある光景だろう。さすが彼女、漆原雅。彼女はやはり天使なのだ。天使。天使だから、彼女の頭上にある神々しい円状の何かしらはきっと天使の輪なのだ。背中から射す光は、神様のお恵みなんだ。すげぇ!
「……じゃぁ、これはどうかな?」
「え、君。……こ、これって……」
雅まじ天使、と呟いていると——僕の目の前に、新たな結婚式衣装が出された。彼女は小首を傾げて僕の返答を待っている。
結婚式の衣装として僕の好みに合うか否か、ベッドの上に載せられたそれを手に取り、しっかりと観察する。
触ってみると生地は——ポリエステルを想像させる。吸水性に期待が出来る。肩の辺りをざっくりと切り、太ももがばっちり見えるような大胆なデザインだ。
胸のところには白い布が縫い付けられており、油性のマジックで書かれ、「三年二組、うるしばらみやび」と可愛らしい字だ。色は紺色で、さっきまでの白色の衣装とはまた異なる。薄く弾力性がある胸の辺りの生地の裏には柔らかい二つの小さな山があり、いつか遠い昔に体育の水泳の授業で目にしたことのあるその衣服はまるで————
「————ってスクール水着じゃないかっ!!」
まるでというよりもろスクール水着だ。スクール水着というジャンルに直球どストライク。ストライクすんじゃねえ!
成人男性が持っていたら確実に逮捕される物ベストエイトに入る紺色のそれを手にしたまま、僕が彼女に問いかけようと顔を上げる。
すると、
「因幡……こういうの——どうかな」
「ッぶはッ!?」
鼻すれすれのところに、潤んだ瞳で僕を見つめる彼女。その衣服は——黒網タイツのミニスカナース。犯罪の香りがほのかにする。もしもこの状況で僕の母が部屋に武力介入してきたら僕はひとたまりもないだろう。僕との血縁関係があるかどうかを疑問に誘うような冷たい視線を母からプレゼントされるか、はたまた素直に警察へ母が速やかに連絡するか。出来たらカツ丼は食べたくない。
——なんて……こったい……!?
彼女の魅惑過ぎる太ももに目を奪われつつも、何とかまともな風体を装うと頭を抱える。これで誰が部屋の中に入ってきても「ナースな彼女と一緒に考える人の真似ごっこをしていたんだよ」と言い訳が出来る。ふぅ。
「あの……さ、どうしたの、その格好……」
「因幡お兄ちゃんはは、こういうの嫌いかな?」
「いや、むしろ大好き——って、え? 因幡……“おにいちゃん”?」
——おにいちゃん……だと?
にまーっと満面を笑みを浮かべている彼女に、眉をひそめた。
一言言っておくが、僕は今まで彼女に妹になってくれと土下座したことも、年下趣味だったこともない。ましてや大人っぽい彼女に妹属性を押し付けるなど。けして妹属性が嫌いなわけじゃないが(彼女ならどんなのでも良いけど。例えばなまこな彼女とか。うじゅるうじゅる言う彼女とか)
……うーん、どうも可笑しい。何か、彼女が可笑しい。初め辺りは全然全くこれっぽっちも不自然ではなかったのに。
「……えっと、お兄ちゃんってどういうこ——」
「——え、なぁに? おにぃちゃん」
「——え、何よ? この雄豚」
「え!?」
彼女に質問した僕の目の前に立ちはだかるは——おかっぱ黒髪ランドセルな、小学校低学年ぐらいの女の子。
隣には、金髪ミニスカートナース。ちなみに金髪美女さんの方は鞭を片手に構えている。どちらも、僕のよく知る彼女とは程遠い人相をしている。
ひやりと首筋に冷や汗が伝う。一体これはどういう状況だ。ネットでよく言う「これ何てエ口ゲ?」という言葉が脳内で反芻される。
「おにーちゃん、だめ?」
少女の方が、僕の方に短い腕を伸ばす。幼いくせして、その表情は色っぽさが微かににじんでいる。
——手を出したら犯罪だぜ。
幼い少女から逃げるように、僕は隣にいる金髪美女の方に身体を向けた。
「調教してあげるわ、来なさい」
金髪さんの方が、僕の方に鞭を向ける。びしぃッと鞭の音が空しく僕の耳に響いた。舌なめずりをされる。
——僕はマゾではないんだけど。
更に逃げようとして、逃げた先には先ほどの少女。やばい、ベッドの上に行動範囲を限定された僕は動けなくなった。背中から感じる壁の感触がひどく切ない。
「おにーちゃん……」
「雄豚……」
タイプが逆方向の女性二人が、頬を赤らめて僕の方へと顔を寄せる。
ひくりと表情がひきつる僕は——迫ってくる女性二人に対して、一言だけ、はっきりと叫んだ。