ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 音符的スタッカート! ( No.12 )
- 日時: 2011/07/26 20:00
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: wzYqlfBg)
- 参照: 空気と馬鹿っぷる中なう。
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「アーイースはーって無いいいいいいいいいっ」
アイスナイ! ナンデヤネン!
冷蔵庫の前で絶叫したら、母さんに「黙れニート予備軍」と叱られた。叱り方が鬼畜だと思うのは娘である私の特権じゃあ! いらない特権じゃあ!
そんな風に、母さんに対する悪意をもろ出ししながら、私は髪の毛からぽたぽたと雫を垂らして廊下を歩いた。背後から母さんの叱咤する声が聞こえる。ちゃんと髪の毛の水拭け、落ちとるわと。微妙に方言が入ったその言葉をかみ締めながら、もしゃもしゃと濡れそぼった髪をタオルで手荒に拭いた。
「うーあうーシャワー最高だじぇー」
柄にもなく鼻歌を歌い上げる。ふーんふふーんふふんーひゅーんげほっぶふうぼほっ…………し、雫が鼻の中でダンスしやがったぜコイツ!
「げひょっごふっぶほうっほ」
高校3年の女子が発するには些か不自然な咳をして、私は自室のドアを開けた。装飾も、デザインも適当なドアノブは、疲れた私の手にすんなりと馴染む。いつものことだ。
そして、昼間の間に母さんが干してくれた羽毛布団にダイブ! アンドもんどり打った! 痛いです安西先生……勢いつけすぎて一回転して壁にぶち当たった私はもうバスケできませんつぅかしません……。
「うぎゃっぽぎゃっぽるんたるんた!」
痛みを隠すために、明るい奇声をあげる。そして流れるような動作で愛するパソコンちゃまの電源ボタンをぽちっとなああああああああああ! これから私は自分の痛いところに触れたり他人を不快に思っちゃうような聖域に入るのでしばらくリアルの私シャットダウンんんん! …………本当に私何言ってんのよ、と内心感じて、さすがに黙った。
「……とぅるっとるー、しょっうせっつー」
小説。私の世界を開こうと頑張るパソコンの画面を見て、呟いてみた。小説。うむ、良い響きだ。小説。ん、でもこれって何なのかな。小説。私の中の何? 小説。書いてて楽しいってのは知ってるんだけどね。小説。小説、小説、小説————
「————まぁ、それはこれからサイト巡りでもして見つけるとしましょーぜ、兄貴」
私は自分の中の小説という存在意義を見つけるべく、サイトのURLをクリックする。やや起動画面より遅れて出てきたページは、3日程前ぐらいにパソコンの前で身悶えた経験のあるものだった。
「しゃーて、見ちゃうぜ見ちゃうぜ!」
前より力と熱気が篭る手でマウスを滑らす。右の人差し指は、以前に比べて震えることは無い。クリック。今回の受賞者一覧。またクリック。大賞受賞者3名の中の——————デヴァイス、という人の名。
「…………どーしよ」
見よっかな、と一旦停止。そりゃ私以上の小説を書く人間の書いたものなんだから、見て参考にはしたいけど。あ、私以上ってナルシ発言と受け取って宜しいですぜ。だってアタチ文章力あるもん! ……あ、嘘ですハイ。ちょっと調子乗ったってゆーか……ハイ。文章力は昨日の晩御飯の残りとして置いて来ました。
「と、かぁ………………躊躇すっかコラああああああああああ高校3年で受験準備してねえわっちを舐めんなよおううううう」
叫んだ。クリックして現実見るために。そうでもしなきゃ、今までちーちゃんやりりるに言われたこと全部鵜呑みにしそうだったち! だから、私はリアルを見てやるんじゃいや見てるのはパソコンの画面だけどねええええええええええ!
「クリック!」
見てやるぜゴラァ、と。私は意気込んだはずなのに。その10分後には、私はその意気込みを後悔する。…………まぁ、失望的な意味合いで。