ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 音符的スタッカート! ( No.17 )
- 日時: 2011/07/26 20:01
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: wzYqlfBg)
- 参照: 空気と馬鹿っぷる中なう。
「…………え、ちょ、これって…………」
眼前の事実は、あまりにも私には強烈過ぎて。だから私はつい、日本語デスカ、と片言言葉を呟いていた。やばい、脳みそがこの文章を理解するのを拒否しようとしているだと! 何という自己勝手さなり我が脳。
とりあえず、自分の脳みその限界を知ることが出来るという特典付きの、実に実用性が高い文章に、もう一度挑戦し始めた。頑張れ私、負けるな私。頭の中で小さい私が応援コールを送ってくる。…………。想像してみたら存外胃に負担の来るものだと悟った。
「う……うむ……? なぜ主人公の性格、普通なのに外見銀髪隻眼赤目……? いや日本ですよねコレ。日本人の主人公様ですよね、祖国さまでらっしゃいますよね。……てゆーか、性格普通でも、この外見だったら先輩に目つけられる気がばりばりするわー…………てかなぜ右腕呪われてんねん」
ごめん負けそう。だって私の友達に銀髪で隻眼で赤い目をした右腕に父親の呪いを受けた人なんて思い当たらねーし! ん? ちょっと待て、日本の高校ではこれが普通だとでも言いたいのかね! 残念だがその攻撃は通らないぜひゃっほーだってアタイは大和撫子だもんにひょほほほほほ!
内心奇声をあげつつ、さらに視線とスクロールバーをスクロール、スクロール。クロールじゃないで、ついでに言うとスクール水着でもない。当たり前じゃね。
「俺の眼帯には数えきれねぇ悲しみと憎しみが篭っている…………じゃあ眼帯とりゃ、その憎しみとやらが発散されて丁度良いんじゃね!」
「刹那…………刹那と言いつつ10分経っているという矛盾はどうなんだろうかと少々文学的な思いのアタチ」
「さっきまで人を殴るのは駄目って言ってた奴がライバルを虫の息になるまで必殺技出しまくるって何事ですかな!? ってかゴッド・スパイラル・電撃・バーストって何それ噛むわ舌」
*
………………半時間程、そんな感じで1人でツッコミ入れてたと思う。何やってんの高校3年生と我に返ったときには、すでに羽毛布団と熱烈キッスをしていた。いや、キッスというか抱擁? 抱擁されて荒んだ心が包容されました。うん、韻踏んでて良い言葉。韻を踏むってよく分からないけど(お前高校生としてそれはどうなんだってゆーツッコミは左から右へと受け流されました)。
「うぎゅうるるるるるーるーるーつーつーつーるーつーるーつー鶴の恩返し! なんちって!」
ごろごろと布団にくるまり、仰向けの姿勢になる。当然のことだけど、真正面に蛍光灯の光が直撃して目をびかーんってしてきたから(体育祭の練習参照してね)、横を向く。布団がごわごわするし、エアコンが効いてるのに妙に熱されて、昼間の太陽のあの暑さを彷彿させた。
「……あー、今何時だっちゃん?」
某あんまりそわそわしないでーな女の子のなり損ないみたいな語尾をつけて、窓の方角へと体を動かす。蛍光灯の反射のせいで、外の様子は見えにくい。だけど、すっかり日は暮れてるってことは分かった。後、お腹の空き具合もアレなんで、そろそろ晩御飯だっちゃなーってことも理解。あー今日のご飯なんだろ、揚げ物じゃなかったら嬉しい——————
「…………たいしょう」
——————うえ?
い、今さ、わたし、何か言わなかった? 何か。何か、何だっけ、そう、無意識にさ、言ったっ、て、ちょ、だからな、に、
「…………大賞」
嘘ですよね、何言ってんの私、だって、さ、わちゃしはアレじゃんかね、うん。大賞にはきょーみないっさ、な感じの、熱血スポ根から地球3つ分ぐらい離れたクール系脱力消極的な女の子じゃんか、だから、だから。
「小説の、大賞」
こんな本音、私の中には無いはずですよね。
「とりたか、っ」
「姉ちゃん?」
この意味不明言語不明な状況の救済者である弟(中2、安心しろ中二病は発症してない)が、ドアの向こうで名を呼んだ。ナイス弟とも言えず、どこかぼんやりと空虚な思いで、体を起こす。
ドアを開けると、ほらやっぱ弟が立っていた。私の方が背がちょっと高いせいか、見下ろす優越感に浸る。
「ん、にゃんだい? ご飯かいマイラブリーブラザーや」
「うんそーだよ、後、一応俺も英語の授業受けてんだから、訳したら恥ずかしくなる単語は言わないで欲しいなねーちゃん」
「うむ、善処しようぞ」
じゃー1階に下りようか、と弟に笑顔で接し、歩き出す。とりあえず、続きの言葉なんて、蛍光灯の光と一緒に消した。