ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 思想中(微)なわたし2 ( No.60 )
- 日時: 2011/03/28 09:23
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)
- 参照: アクセロリータ「やべェよ! 止まんねェよ!」
「ちーちゃーん、さーあむぅーい」
「アンタがここが良いって言ったんでしょう」
いひいひと歯を見せ付けるように笑うと、外気が歯の表面に触れて冷たかった。頭上高い太陽は暖かい陽射しというよりも、冬の冷たさで首をちぢ込める私たちを笑ってるようだった。私はちーちゃんに笑い、太陽はそんな私を笑う。結構良い感じの図じゃないかコレ?
「でもさー、こんなに寒いんだったら中の方が良かったかもねーとか思ってみたり?」
「今更遅い」
滑らかな手の甲で、ぺちりと額を太鼓代わりにされた。痛いというよりも手の冷たさに驚く。ちーちゃんは心が温かいから手が冷たいんだね、とほざいたらさっきの行動をリピートされた。アタイのおでこのことを考えてちょー。ただでさえ寒いっちゃっちゃっちゃーってのに、そこに痛みが加わったらどーなるっちゅーねんやー、うむぎゅー……あ、駄目だ。寒いからいつものテンションが出ないでザマス! 具体的に言うと、アンパンマンが新しい顔じゃなくてドモホルンリンクルつけちゃった感じ? うん、よく分かんない例えご苦労様、私のどろどろの脳みそ。どろどろ過ぎて鼻から溢れてきてるぞ、ぐしゅっ。
「で、アンタは何で今日ここでお昼ご飯食べようと思った訳」
「…………ちーちゃん、やっと2人きりになれたね……」
「気持ち悪いっつーの」
「いやん」
昼休憩。学校の中庭にて。昼休憩といえど、結局はそこにお昼ご飯食べる時間含まれてるわけだし、食べるの遅い人にとっちゃ休憩も何も関係無いんじゃないのかなとか思いながら、私とちーちゃんはいつもの昼休憩を過ごす。昨日と何か違うかといえば、今日はその背景が緑に溢れていることと、昨日に比べてまた気温が下がったくらいだろう。ついこの前まで体育祭(私は今でも運動会と呼ばして頂いているぞ!)でえっさほいさ汗汗だくだくだったのに、二ヶ月経った今はもうチキン肌が日常の主役になっている。ん、でも二ヶ月も経ったからこんだけ変わるって思ってる人もいる訳か。てかそれが普通? よく分かんないにゃー。
「ね、ちーちゃんちーちゃん」
「口の中に物入れたまま喋らないで。……で、何」
「ちーちゃんにとって、時って流れるの速かったり遅かったり?」
特に何でもない会話の種をちーちゃんに飛ばす。ちーちゃんは体育祭の時より少し伸びてセミロングになった髪を耳にかけながら、手元のお弁当箱に視線を落としていた。イチョウ色のお弁当箱には綺麗に具材が陳列していて、いかにも食欲カモンベイビーって雰囲気である。雰囲気に便乗して卵焼きを強奪させて頂きまもぐもぐもぐもぐ。
「何人に質問しといて人の弁当の中身食べてんのよ、弾くわよ」
「ごぽっ!? ちょい待ち、弾くってちーちゃんそれ! どこを、ねえどこをよッ!?」
うるさい、考えてるから黙っててと。冬の風よりも温度が低い視線で射抜かれた。いや考えてもらう程のレベルの答えを求めていないんだけどねーそうなんだけどねーと多少気まずい感情が胸を過ぎったけど、そのまま気まずさには過ぎ去ってもらうことにした。逃げるものは追わない、追わないものは逃げない! ……あれ、何か違うぞ? 正直今の私の脳内に全力で自重という言葉を贈りたい。
「それで、時の流れについてだけど」
「アァ、ソウイエバソンナ話題デシタネー」
「時の流れというのは……まぁ、速いわね」
人間が持つ感情の喜怒哀楽のうち、どれにも当てはまらないような顔つきでちーちゃんは言った。丁寧な箸さばきで、焼いたシャケの身を骨をとりながらほぐしていく。鮮やかなピンクが細かく割れて、レタスの緑に映えている。やはりちーちゃんは完璧だ、だって私だったらシャケの骨なんて気にせず飲み込むし。面倒だし。そもそも出来ないし。見事三拍子、みたいな。
「私たち、この前まで寒い寒いって言いながら学芸会について考えてたのに。学芸会の本番は……この時期ぐらいだったっけ。中学生の時は文化祭だったわ。確かアンタのクラスはメイド喫茶とかいうよく分からないのをやって、人気投票で1位になってたかしらね」
「あー、やったやった! ゆっちゃんが提案した奴だよそれー。ちーちゃんとこは何したんだったっけ、喫茶店?」
「うちのクラスは劇よ、あんまり覚えてないけど」