ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: Io sono speciale.※オリキャラ募集中※ ( No.19 )
日時: 2010/10/03 10:36
名前: 虎紺 (ID: l1ZIjquS)

第三話


ゆっくりと歩く僕と聡哉。目的地は学校まで直行するバスのバス停。
普段から早めに出ているためゆっくりとした歩調なのだが、今日の僕らは「ゆっくり」というより「重い」足を動かす。

「知っている」「知らない」という溝が僕らの間に広がり、ふとした拍子で飲み込まれそうになる。
堕ちた後に待っているのは闇ぐらいか。
そんな事を想いながら、気まずい沈黙を守る。


・・・と———


「おっはよぉ————ぅっっ!!」

朝から凄い肺活量だな、としか(その声に圧倒されて)思えないような大声。
しかもやたらと「女子」の声で、朝からフリフリのレースが目の前に見えたような錯覚さえ覚える。
嫌な錯覚だ。

声の主の大体の見当は付いているので、溜息をつきながら振り返る。
案の定こちらに走ってくるのは僕らの幼馴染の小山凛子先輩。
長い髪をふわふわと漂わせながら速い速度で走っている。大きな目を爛々と輝かせながら走る姿は最早チーターが背後に見える。
そしてその後ろから一生懸命走ってくるのは優伊刻。
男子のくせに凛先輩の速度についていけないらしく、口を大きく開けて、よれよれの足を必死に動かしている。

その様子を見て、口を緩ませながら聡哉が呟く。
「今日も刻は大変そうだな。あんな事言わなきゃよかったって目が言ってる。ってか逝ってる。」

「そうだな、もう凛先輩についていける奴なんて学校で何人もいねえだろうに・・・可哀そうに刻」

「あんな事」とは、少し前に刻が走ってくる凛先輩に言った言葉。
「凛先輩はいーよな、俺も凛先輩みたいになりてー」
その言葉に僕と聡哉が反応した時には時遅く。
「え、じゃあ毎朝私と走ろっ?そうすれば早くなれるよ!
私もちょうど最近独りで寂しいなーーーって思ってたし。うん、そうしよ!」
顔をひきつらせた刻が、
「いえ俺は地道にトレーニングする方がぜってえあってるしってか嫌だ嫌だ嫌だ」
といっても暴走機関車・凛先輩は止まらず。
殆どムリヤリ、毎日こうして走らされている。

なにはともあれ、ずっと無表情だった聡哉が笑ったし、僕も気持が楽になった。
二人の間の溝は皆に話さない、心配をかけるのが怖いから。


そうして、嘘は深くなっていく。