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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Io sono speciale.—さぁ聞かせてよ、君の声— ( No.38 )
- 日時: 2010/11/28 13:57
- 名前: 虎紺 (ID: l1ZIjquS)
番外編
「絵」
社会の時間。社会は何時も退屈だ、誰誰が何何をどうした、テストに出るぞ。
そんなことの繰り返しで、目新しい事は何一つない。
過去ばかりを振り返る様はまるで人間の様。
そんな事を想いながら、パラリ、とノートを開く。
蒼い、何処にでもある大学ノート。
最近使い始めたA5サイズの社会ノートよりも一回り小さいそのノートは、開いたままの社会のノートと重ねればまず先生に見つかる事はない。
勉強用に何時も使っている黒っぽいシャーペンではなく、絵を描く時用の鉛筆に持ち替え、クラス全体をそっと見回す。
大丈夫だ、先生は黒板を描くのに忙しくてこちらを見ていないし、クラスメートはどうでもよさそうにそれをノートに書き写している。
こちらを見ているものなどいない、そう判断すると薄い線をノートに走らせる。
何を描くかなど何時も決めていない。
その時の気分で描き上がるそれらの絵は、何時も僕の心を忠実に写し取っているようで好きだった。
やがて出来あがったその絵は、泣いている何か。
顔をゆがめる様は人間の様だが、理由は僕自身にも解らない、弓矢が幾本もささっている様子が人間には見えなかった。
顔を覆い泣いている事を隠そうとし、だが気付いてほしそうにこちらに視線をくれるそれ。
・・・この絵は、僕自身の心なのか。
そんな疑問を頭の隅に追いやり、蒼いノートを閉じて机の中に入れる。
ちょうど授業終了のチャイムが鳴った。
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