ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ≪ODD‘オッド’≫ ( No.2 )
- 日時: 2010/09/12 11:01
- 名前: 伝史 (ID: U3CBWc3a)
【少女】
それは、瑞樹が公園から自宅へ戻る時に起こった。
瑞樹は公園から出ると、桜の花で埋まった道を俯きながら歩いて行く。
桜の花を見ながら、歩いているからだ。そのため、前を見ていない。
ある程度歩き、カーブに差し掛かったその時だった。
「痛った!!!!」
「うごっ!!!」
瑞樹の腹部に何かがぶつかり、その拍子で地面に派手に倒れた。
瑞樹は腹部を手で押さえ、呻き声をあげる。鳩尾だ。
「だ、大丈夫ですか!?」
ぶつかったと思われる中学2年生ぐらいの少女は、すぐに瑞樹に駆け寄る。
「大丈夫・・・大丈夫・・・・・」
しかし、瑞樹にとってはかなりの衝撃だった。
恐らく、少女は猛スピードで走っていたのだろう。
「怪我、どこかしました?」
「倒れた拍子に・・・肘怪我しちゃったけど・・、大丈夫。」
「見せて。」
少女のその一言に、瑞樹は何か不思議な物を感じた。
少女は瑞樹の腕を掴み、少量の血が流れている肘に右手を重ねた。
すると、黄緑色の光が薄らと少女の手を輝かせている。
「これは・・・・」
「誰にも言わないでね。私、治癒能力があるの。」
少女のその言葉に、瑞樹は自分と同じということが分かった。
この子も、人類を越えた人類なのだ。
「ありがとう。名前は・・・?」
「私は渡会真奈。あなたは?」
「俺は灰堂瑞樹。ところで、何で走ってたんだ?」
瑞樹のその言葉に、真奈は少し表情を変えた。
すると、真奈は先ほど駆けてきた道を見渡し、瑞樹の目をじっと見つめながら説明を始めた。
「実は・・・・政府に追われてるの。」
「は・・・?」
真奈の言葉に、瑞樹は一瞬だけ表情が唖然となる。
よく分からないが、瑞樹は面倒くさいことになることを察知した。
脳裏に「早く行こう」の文字が浮かんだが、だからたといって真奈を置いて行くわけにはいかない。
「ここら辺にいるはずだ。探すぞ!!」
瑞樹の耳に、複数の男性と思われる声が聞こえた。
距離からして、50メートルほど離れた場所からだ。
「その話、本当か?」
「え?う、うん。」
瑞樹はしばらく真奈の目を見つめると、嘘ではないことを信じて、真奈の手を掴む。
真奈は驚いた表情で瑞樹を見つめる。
「行くぞ。その政府の連中が、ここにもうじき来る。」
瑞樹はそう言うと、真奈の手を引っ張り自宅へと急いだ。
───
公園から少し離れた場所にある住宅街。
その中に、瑞樹の自宅はあった。屋根が真っ赤の2階建て住宅。
「両親は仕事で、兄貴も仕事でいない。安心してくれ。」
瑞樹は真奈を自宅に入れ、そのままリビングへ向かう。
「飲み物出すから、適当に座っといて。」
瑞樹はそう言うと、キッチンに向かい飲み物を用意し始める。
真奈はリビングを見渡し、液晶テレビの横に飾ってある写真に目を向けた。
「これ・・・家族?」
「ん?あぁ、1か月前ぐらいかな・・・・。ニューヨークに旅行行ったんだ。」
「海外かぁ・・・いいなあ。」
真奈の言葉に、瑞樹は笑顔で何度か頷く。
テーブルにジュースを出すと、瑞樹と真奈は椅子に座った。
そして、瑞樹は気になっていた質問をぶつける。
「なんで、政府に追われているんだ?」
「・・・・・」
瑞樹の質問に、真奈の表情から明るさが消えた。
「あなたは知らない方が良い。これは、現在の日本社会が知れば大変なことになる。」
真奈はジュースを飲むと、瑞樹の家族写真に指を指す。
「あなたは、家族がいますよね。私にはいません。」
突然の真奈のカミングアウトに、瑞樹は目がカッと開く。
「私は孤児。大切な人がいないから、できる戦いなんです。あなたを巻き込みたくない。」
「一人で抱え込むな!!!・・・・な〜んてね。説明してよ。」
瑞樹の言葉に、真奈は一瞬驚いた表情を見せる。
だが、真奈の表情に明るさが戻った。
「分かりました。説明をします。」
そして、真奈は全てを話し始めた。