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Re: 生きたいあーちゃんと逝きたいあーくん ( No.17 )
日時: 2011/04/25 15:20
名前: 出雲 (ID: luklZ16E)
参照: 第一章「現実でりーと」→第三話「でりーと病棟1」

   第三話 でりーと病棟


木曜日、僕が最も嫌いとしてる所。



そして、放課後の話。

『いーさん?』
学校の公衆電話、僕は今そこに立っています。
そして握る電話の先にいるのはいーさん。

『あず?どした』
『いえ、今日病院なんですけど』
『…ああ』
『そのまま行くので、遅れます』
『分かった』

こんなこと連絡しているだなんて、母親と話しているみたいだ。
母親なんていないけど。

言葉に意味無いし。

『それじゃあ』
僕は電話機を置くと、握りしめていた十円玉を財布に戻してその場を後にすることに。

肌寒い風が肌に強く当たって痛い。
僕は、そうして精神科病棟に向かった。




真っ白で、病院の奥にあるあの外よりも寒い場所。
僕はいつも通りに精神科病棟へ行くまでの道を歩いていたわけで。

廊下を病人らしく歩くわけにもいかなくて、ただただ俯いてた、のに。


「あずさくん?」

あががががが!!
突然の背後からの攻撃!
耳鳴りがする、吐き気がする、名前を呼ばないでください。
今すぐでりーとでりーとでりーと

「あああああああああ」
でりーとできない。
消えない、声が。

おんなのひとでまっしろでぼくのほうをみつめるすがたとかぜんぶぜんぶきえない。

「大丈夫!?」
大丈夫なはず無いじゃないか、訴え始めた身体がこの場所を拒否し始めた。

だから、嫌なんだ。
だから、忘れられないんだ。

廊下で崩れ落ちた僕は耳を押さえ、この病院にもっともあった人に変わった。
精神が異常な、人。


「だだだ、だいがっじょぶでですっ」
言葉にならなかった言葉。
アレ?なんだか、何もかもがおかしくなってる?

女の人、じゃない。
看護婦さんは僕の背中をさすりながら、突然おかしくなったというか、そうなんだけど。

自分のしたことに気付いてないみたいだった。
あたりまえか。
「大丈夫よ、落ち着いて…」
「あがががが」

吐き気がして、口を押さえて看護婦さんの存在も無視して走りだす。

駆け込んだトイレで、胃の中のものを全て吐き出す。
久しぶりに食べた学校の給食が、全部全部流れた。
「————————っ」


胃の中が空っぽになって、また吐き気がする。
吐き出すものが無いのに。


そうやって、何もかもを流した後。

「氏名クン?」
声が聞こえた。
振り返ることも、言葉を発する事も出来ない。

それでも。
声の主は、内海 明流だったわけで。



いーさんは言った。

忘れろって、何を?分かってたけどさ。
聞き返した。
そうしたら、いーさんは俯いて何も言わなくなった。
多分。
いや、絶対に。

分かってることだけど、それは忘れることなんかできる筈もなくて。

言葉の意味を放棄しました。