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Re: 生きたいあーちゃんと逝きたいあーくん ( No.18 )
日時: 2011/04/25 15:21
名前: 出雲 (ID: luklZ16E)
参照: 第一章「現実でりーと」→第三話「でりーと病棟2」


「…失礼」
お見苦しい所を見せてしまったようで。

僕だと確信した内海クンは言う。
「大丈夫ですか?」
うん、それしか言う言葉はないだろうに。
そのもっともな言葉に頷いて、彼を見る。

手に握られていたのは白いタオル。

「今日、診察?」
「お見舞いです」
ふむむ、お見舞いとな。
ということは握られているのはその、方のだと思われますな。

でも、彼は手に持っていたタオルを僕に手渡してきた。
「拭いて下さい」

「いいんですか?」
「全然」
それではお言葉に甘えて。
ふきふき、と…言葉の意味は分かりますね。

口元を拭うと、改めて問う。
「お見舞いって言うのは…?」
他人の事に口出すのはどうかと思いますけど。
僕にとっては関係ないのであーる。

「透の…友人のです」
最初に出たのは、名前。
その彼と同じ名前の友人を聞いて、思い出す人が一人。

「透って、水白 透?」
水白 透。
一年前の殺人事件に彼と共に関わったという少女。

「そう、透の」
彼女はまだ入院してるのか。

話を聞くところ、彼女は殺人事件の影響で右腕の機能を失ったとか何とか。

「透サンの所早く戻った方がいいんじゃ?」
僕なんかの相手をしていていいのか。
僕も早く診察に行った方がいいんだろうけど。

逝った方が、ねぇ…

「それを言うなら、早く診察行った方がいいんじゃ?」
返された!

「あぁ、そうですよね」
その言葉は、早く行けよって言ってるのだと認識。
ふむぅ…なんだか邪魔ものっぽい。

「それじゃ」
内海クンは僕の言葉に会釈して道を譲ってくれた。


あ。タオル、どうしたものか。


「氏名君、大丈夫だった?」
トイレをでると、待ち伏せていたのか。
違うか。
待っていてくれた、訳だ。

「すいません、大丈夫です」

「氏名君、担当の先生は?」
「えーっと。久留間先生です」
久留間…名前は覚えてないです、すいません。

久留間先生、男の人。それ以外は謎。

「久留間先生は、こっちね」
僕の前を歩こうとした看護婦さん。

だが、その看護婦さんを呼ぶ声?が一つ。
「佐藤君!」
呼ぶ声からして、先生だと思う。

日本で一番多い名字の看護婦さんは、戸惑った様子で僕に助けを求めてきた。
…新入りだと思います。

「あ、一人で大丈夫なので…」

待っていたかのように、そう聞くと佐藤さんはお礼を言ってかけていった。


…何処に行っても邪魔ものなのかね。


「哀しい人間だよ全く」
そうして、肩を落として歩く素振りは…
しなかったけども、呟いて歩き出す。

いーさんが心配するかもな。
時間が遅れることは明白だし。


言葉の意味はもちろん、無いけどさ。