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Re: 生きたいあーちゃんと逝きたいあーくん ( No.31 )
日時: 2011/04/25 15:28
名前: 出雲 (ID: luklZ16E)
参照: 第二章「崩壊りばーす」→第五話「りばーす中1」


      第五話 りばーす中


うーん。
ということで少し昔話をしようかな、なんて。

言葉に意味をとらえるかどうかは、僕には何とも言えないけれど。


まだ。僕が壊れる前の話。


耳に響く声、聞き覚えがあるのに何故か珍しいと感じた。

『死んだ』

「誰が?」
『大人』
単語で区切られた喋りをした目の前の人物。

夜、僕がお風呂から出て来た時のことだった。
その言葉を弟から聞いたのは。

「あゆみ、大人ってお母さんとお父さんのこと?」
こくり、そんな音が出るような頷きを見せたあゆみ、こと弟。

『あずさ、あかりが帰ってこない』

あゆみ、弟。
あずさ、僕。
あかり…

「兄貴、何処行ったの?」
あかり、兄。

首を横に振って、あゆみは僕を見てくる。
そういえばぼくの家は三兄弟そろって女みたいな名前をしてる。
ついでに、全部ひらがな。
《あ》も絶対についてるし。

「どうせ、友達のところでしょ」
あゆみが話をそらしたせいで忘れ去られた最初の言葉。
死んだ、って言ってたっけ?


誰が?


『あずさ、どうする?』
そっか。親だっけ。

あゆみの言葉、一番上のあかりは帰ってこないし僕がどうにかしないといけないらしい。
それでも電話を取ったのは、あゆみ。

何がどうして、死んだんだろう?

「どうしようか」
あの人たちのことはさっぱりわからない。
でも、考えられることは…
「無理心中、かな?」

『違う』
否定された、あの人たちのことだから自殺ぐらいしかないと思ったんだけどな。

『交通事故』
あっさり。

本当にあっさり死んだんだね。

あんなに、死のこと語ってたくせして。
最期はあっさり死んだんだ、綺麗に死にたいとか言ってた気がするけど。

「へぇ、交通事故か」
僕達、心カラッポ。
あかりは。兄貴はどうか知らないけど。

引き籠りの親に育てられて、毎日おかしなことを聞かされて。
僕とあゆみは乾いてしまった、いや枯れたのかな?
「なんか、泣けないよな」

歪んでた。
愛とか、死とか、全部。

『そう?』
アレ、あゆみが少し哀しそうに俯いた気がした。

追伸。
あゆみは不登校だ、いじめが原因だって自分で言ってたかな。

いじめの原因もきっと僕等、家族だって言うのに何でそんな顔するんだろう?

「僕は、泣けないけど…」
本当にね。
『あずさはカラカラだね』

あゆみにしては長文だったんじゃないかな?
カラカラねぇ…

「かもねぇ」
あゆみよりも、カラカラだったわけか。
僕は自分から学校を拒絶したから、あゆみからしてみれば僕こそ…


怨まれるような奴だったのかな?



『死んだって、マジ?』
僕と弟が話していた部屋に来客者。
扉がゆっくり開き、声と共に姿を現したのは金髪がチカチカと目に入る派手な奴。

「兄貴」
『あかり』

兄弟そろって、声を発した。