ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 生きたいあーちゃんと逝きたいあーくん ( No.33 )
- 日時: 2011/04/25 15:30
- 名前: 出雲 (ID: luklZ16E)
- 参照: 第二章「崩壊りばーす」→第五話「りばーす中2」
『で、マジなわけ?』
僕等兄弟の言葉に、もう一度聞いた兄貴こと「あかり」が一歩一歩近づいてくる。
手に握られていたのは、カッターナイフ。
「マジだよ」
ナイフが目に入ったけど、それはいつものことなので保留ってことで。
僕が兄貴の言葉に返答すると、あーと呻きながら何度も頷く。
あゆみは僕の横で、兄貴を見上げてるし。
『一緒に行けばよかったか、温泉だっけか?』
残念そうに溜息をつきながら、しかし、哀しみの色を見せない表情だった。
あ、そうそう。
『連れてかない』
大人の方々は、僕等を置いて温泉に出かけていったんだった。
歪んだ愛で繋がった血の繋がりもあるその人達にとっては、僕等も邪魔ものだったわけで。
あゆみの言葉に兄貴はそうだよなーと呑気に言いながら、手に持ってたカッターナイフを慣れた手つきで回し始める。
『一回でいいから、死体見てみたいんだけど』
「一緒に言ったら自分も死ぬでしょ」
『あ、そっか』
馬鹿な会話をしているが、内容がかなり酷なんだけど…本気で言うから怖い。
兄貴は、ちょっとおかしいと思う。
ちょっと。かな?
「そういえば、何処行ってたの?」
『あ?友達のとこ』
予想通りの言葉が返ってきて、明るい金髪が揺れる。
僕、黒色。
弟、茶色。
兄、金色。
全員髪の色違うわけだ、そういえば。
どうでもいいけど。
『友達』
あゆみが小さく呟いたのが聞こえた。
兄貴の友達。
よく、こんな人と仲良くできるよな、うん。本当にそう思う。
兄貴の話だと、二人いるらしいよ。
「今日も、馨さん達と?」
馨。
『馨と郁とな』
郁。
どちらも僕が思うに、女の人っぽい。
名前とか。
「やっぱり」
女といつも遊んでるって、何してるんだろう?
子供には分からないみたいな何かかな?
うん。
まぁ、顔はいいから分からないでもないかな。
僕が分かる兄貴の話はこれだけ。
閑話休題、今大変な状況になってるので本編に戻ろう、本編なんだけど。
「それでどうするの、これから?」
一番気になってた事を口にする。
親が死んだ。
これは、子供である僕等にとって重要で大変なことなのだ。
『あ、葬式のことか』
「それもあるけど、金とか無いし」
『暮らしていけない』
沈黙が流れた。
兄貴は口を閉ざして、考え込むように顎に手を当ててから明るい声が漏れる。
『大丈夫だろ、親戚とかがどうにかしてくれるって』
随分適当な言葉だった。
『俺はもうこの歳だし、一人暮らしでも何でもするしさ』
一人暮らししたかったのかな、いつでもできただろうに。
でも、兄貴の言ったことはもっともな話だった。
親戚の話は聞かない、でも葬式を開けば話を聞いた誰かがどうにかしてくれるだろう。
僕等兄弟は親が死んでも、何も変わらなかった。
親が死んでも、何も変わらなかった筈なのに。
その後。
僕は独りになった。