ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 生きたいあーちゃんと逝きたいあーくん ( No.34 )
- 日時: 2011/04/25 15:31
- 名前: 出雲 (ID: luklZ16E)
- 参照: 第二章「崩壊りばーす」→第五話「りばーす中3」
あゆみが居なくなった。
親の葬式を終えて一週間経たない頃、突然姿が消えた。
不登校だったあゆみは、外に出なかったけど葬式に出る為に何日振りかに外へ出て、それで……
『あずさ、あゆみ自殺したってよ』
あかりが、居なくなった次の日の朝に、何の前置きも無くそう言ってきた。
あゆみは、通っていた学校の自分の教室で首をつって死んでた、らしい。
自殺、それだけなら分かるけど、あゆみの身体は関節が曲る筈の無い方向に折れ曲がってた、らしいし。
ぼきぼきだったのに。
自殺なんだとか、どうしてか、分からない。
全部。僕は見ていないし、突然何故あゆみが死んだのかも、問いかけられても首を振るしかなかった。
『あゆみ君が自殺したのはどうしてなんですか?』
知らない。
『いじめが原因と、言われていますが?』
だったらなんでいきなり。
『お母さんとお父さんがお亡くなりになった直後……関係はありますか?』
僕よりは、精神的に傷ついた筈だけど。
『君とお兄さんは何も知らないのですか?』
そう言ってるだろ。
兄貴は、あゆみが死んだことをきっかけに家に帰らなくなった。
テレビや新聞であゆみの事が報道されて、人権を無視していろんなことを書いて。
メディアでは、僕達家族の事も勝手に調べて。
それで。
自殺と報道され、ぼきぼきだった事は隠して伝えられてきていたのに。
突然それを公開し始めた。
その報道により、大人たちは兄貴の事を犯罪者に仕立て上げた。
次の日、新聞を見ると兄貴があゆみを殺したのではないか?
そんな記事に変わっていて、理不尽な言葉が並んでいた。
「兄貴が、犯罪者……?」
ありえないことではないと、思ったりもした。
兄貴は確かに普通じゃなかったし。
でも、兄貴はずっと家にいた。多分いたんだ。
『あずさ、絶対外でんなよ』
「何でいきなり、兄貴らしくない」
『あゆみは神隠しにあっていなくなったかもしんねーから』
神隠し、兄貴はそう言ったけど多分それは、誘拐って意味なんだと思う。
その日兄貴と僕はそんな会話をしていて、兄貴はいつにもましてらしくなかった。
兄貴が犯罪者なのでは?そう報道されて、少したった頃。
また、繰り返した。
兄貴が死んだ。
それも、人を刺して自分も刺して、自殺した。
兄貴は何も悪くなくて、あゆみのことを心配してたのに追い詰められてたんだと思う。
なのに、兄貴は死んだ後も悪者扱いされた。
留守番電話にいかにも、兄貴らしい最後の言葉が残ってた。
『俺、死体見れたら死んでもいーや。そんじゃ』
その言葉通り、兄貴はあゆみを追って死んでいった。
あゆみは親を追って死んでいったのかな?
僕はあの時兄貴を追って死ぬべきだったのかね?
そうして、僕は一カ月で家族全員を無くした悲劇のヒロインになったとさ。