ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 生きたいあーちゃんと逝きたいあーくん ( No.47 )
日時: 2011/04/25 15:06
名前: 出雲 (ID: luklZ16E)
参照: 第零章「無色せかい」→第一色「白色せかい1」

          第一色 白色せかい


まっしろ。


目の前がまっしろになった、まっくろじゃなくて。

何もかもなくなって、全部白紙に変わっちゃったみたいなんだ。
分からないけど。知らないけど。理解できないけど。

「理解できないよ、したくもない」

どうしてもここが地球なのか、日本なのか、僕の知ってる世界なのか、なんなのか分かんない。


「僕はなにをすればいいんだろう」
これからどうすれば?
「僕はどうやって生きていけばいいんだろう」
何もないのに?
「僕は何で生きてるんだろう」
生きている意味が、価値が分からなくて死んでしまいたいと。

この僕の知らない、僕の生を無くした世界からいなくなってしまいたい。


ねぇ。


「どうすれば死ねますか?」



僕は誰だれかも分からないおとこのひとにといかけた。
おとこのひとは僕を見て、口をひらいた。

「殺せば…」

言葉がとぎれる。

「人を殺せば、きっと死ねると思う」
おとこのひとは死んだような目で小さくつぶやいた。
おとこのひとの頬には気付いていないのか涙がつたってた。

でも。
僕にはそれがわからない。
「それは死んだんじゃなくて、殺されたんじゃないですか」

殺された。
僕はどうしてもそれが、兄貴の。あかりの事を言っているようにしか聞こえなかった。

「…人を殺せば殺される」

おとこのひとはまた小さくつぶやいた。
僕は何言いたかったけど、その前におとこのひとが口をひらいた。
「俺もきっと、殺される」

酷くかなしそうな眼だった。

おとこのひとは僕を見て、といかける。
「君はどうして死にたいの?」
それは。
「生きている意味がないから」

「生きているひつようが無くなったから」
元々ないけどね。

母親と父親が死んだ。
もうここで生きている必要無くなった。
あゆみが死んだ。
これ以上哀しみたくないから生きたくなくなった。
あかりが死んだ。
何も失うものが無くなったから死にたくなった。

この世界で僕が知っている人はもう5人もいなくなって、でも僕を知っている人は世界中にいて。
でもそれが。

「呪いだとか」
新聞に書かれてて。
「計画殺人だとか言われるし」
あかりがみんな殺したとか。

「僕一人、とりのこされたんだ」
おとこのひとは僕が話している間、何も言ってはこなかった。

きっと、知らないこどもに話しかけられて、しかも死にたいとかいう変なこどもの話を聞かないといけなくて…
めんどくさいに違いない。

「君、名前は…?」
おとこのひとの声はなぜかふるえてた。


僕はそこでやっと自分の名前をなのった。


「有宮あずさ」