ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 生きたいあーちゃんと逝きたいあーくん ( No.65 )
- 日時: 2011/11/30 22:03
- 名前: 出雲 (ID: lUTEu1Y0)
- 参照: 第三章「不完全るーる」→第八話「るーる説明2」
「…それじゃあ…」
空気が乾いて、必要に僕の喉を圧迫する。
何か言葉を発していないと、何故か悲しみまで零れてくるようなそんな気までした。
…言葉から生まれた、なんてよく言われているしね。
「あかりはなんで死んじゃったんだろう」
今さらで、どうしようもなく意味のない質問だった。
僕はそんなことを言いたかったんじゃない、僕は別にあかりに関して何か同意を求めようともしていない。
…けど。
「ごめん」
「…」
いーさんが謝った。
ほらみろ、僕はそんなことは聞きたいんじゃないんだ。
「違いますよ、僕は」
きっと悲しくて。
苦しくて。
どうしようもなくて。
やるせない、それだけなんだけど…
どれも勝手にいーさんに押し付けているだけだ、知ってる。
言葉にも意味ないの、知ってる。
「…やめましょう」
「あず…」
「また、いーさんが話したくなったときに。僕が聞きたくなったときに話しましょう」
僕は無責任だから、自分が火種の言葉でも自分で処理しようとは思わない。
先延ばしにして、知らないふりをして、見て見ぬふりで、ずっとそれを続けてきたのだ。
嘘つきだから、仕方ないけど。
「いーさん、もうこんな時間ですけど少しだけでも休みましょう?」
「…そうだな」
僕は無責任に話を中断させたわけじゃない。
矛盾してるって…僕の言葉に意味があると思っちゃいけないよ?
だから、理由があってこその無責任さだ、断じてそう僕は言い張ってやる。
止まった車のガラスから見ると目の前には一戸建ての家が建っている。
僕らの家、長々と話しこんでいる間に僕は我が家に帰ってきていたわけだ。
なんとも、いーさんは運転しながら僕の意味のない話に付き合ってくれてたわけなんだけど…
とてつもなく申し訳ないね。
「いーさんは明日仕事なんじゃないですか?」
「ああ、明日はな」
車から降りる僕ら。
いーさんが金属通しがぶつかり合う何とも耳に悪い音を響かせながら鍵をいじっている。
たくさんある鍵のなかから車の鍵を取り出して、差し込む。
「…あずは、明日は?」
そう聞かれて気づいた。
金曜日、学校はもちろんあるし行く気もある。
だけど僕にはもちろん行かないといけないところがもう一つある。
いーさんが家に向かって方向転換したので僕も右向け右。
…この動作、小学校の時苦手で仕方がなかったのを覚えている。
大勢がいる中で全員が同じ動きをする、僕はその中で一人左を向いていたのだけど。
懐かしい、小学校っていつだよ、僕はいつまでランドセルを背負えていたんだろうか…曖昧すぎる。
「行きますよ、学校に」
「そりゃそうだ」
ですよね。
家の前到着、もう一度同じ動作で鍵を探す。
「…で、あーちゃんとゆらりに会いに行かないと…」
ゆらり?と一回呟いてから
「…そうか」
と頷いた。
僕は行かなくてはいけない。
あーちゃんに会いに。
ゆらりに会いに。
約束を守るために。
これ以上後悔しないように、って後悔なんて一度もした覚えはないんだけど。
うん。
あると言ったらひとつだけだ。
「気をつけて行けよ」
いーさんがそう言って、いつの間にか捜索し終っていたのか鍵を回して扉を開けていた。
その向こうには別次元が!!
…広がってるわけない。
何故だかものすごく久しぶりと感じた我が家に帰ってきた。
ただいま我が家。
「はい」
後悔をしたことなんて、一度もない。
でも。
あるとしたらきっと一つしかないだろう。
なんで、僕は生れてきたのかって。