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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 青い、ちっぽけ、ボンクラ。 不安定な僕等 ( No.9 )
- 日時: 2010/09/24 08:49
- 名前: 夜深 ◆2C0BmKQq3I (ID: a6i4.RaK)
第八幕「落ちた空。」
人込みに揉まれて、やってきた秋の祭り。
いつの間にか暮れてきた景色。
俺の額には汗がじんわり広がる。
マイクを通して伝わる、秋の祭り特別ゲストの歌手の声。
透明感のある力強い歌声。歌っている途中、所々交ざる裏声も心地よい。
でも、
俺はここでこうして眺めてるだけで、
彼女が届けてくれる心地よさにこたえることはできない。
転がってきた空き缶をもっと遠くの田畑へ投げ込んだ。
「カーン」
足蹴にした空き缶は空しく人込みを駆けて空を舞った。
すると、
「あっ」
気付いたときにはもう遅かった。
空が。 空が落ちてくる。
ちっぽけなただの空き缶を力込めて蹴っただけなのに
あれだけの、たった一人の人間の力だけで。
空が。 空が落ちた。
俺たちは粉々になった。
歌姫も、友人も、全員。
軽そうに見えて、重く苦しい雲に押しつぶされて死んでしまった。
俺は泣いた。
こんなに泣いたのは、いつぶりだろうか。
真っ赤な俺の目や鼻と同じように、
隣に転がっている空も真っ赤だった。
「ゆうぐれだ、きれいだね
おうちにかえろう、
にいちゃん」
幼い弟は小さな手を差し出した。
俺に、弟なんていないのに。
さっきとは違う汗が出てくる。
ひんやりとした、汗。
「さあ、かえろうよ。ひとごろしのにいちゃん
ぼくのおうちはね、すっごくここちいいんだよ」
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