ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ユメクイ ( No.3 )
日時: 2010/09/16 20:19
名前: 眠気顔 ◆GgmUTuFzDY (ID: SSNg/Zhu)



◆GUEST 1 君拾い part1◆


女は一人、暗闇の中にいた

————また、あの声がする

「…やだ!」

女が言葉を吐いた瞬間、手の形をした物体に足を捕まれる。

女は必死に光に手を伸ばすが、その光も徐々に薄れていく。

————待って

「やだ」

————消えないで

「やだ」

————私の

「やだ!」

女が叫ぶと、そこはもう暗闇の中ではなく学校へ向かうバスの中だった。

「ゆゆこ、お前そんなに学校行くのが嫌なのか?」

女——ゆゆこの隣に座る若い男が言った。

————夢…、疲れてんのかな

ため息をつきながらゆゆこは言葉を返す。

「そーね、行きたくないわぁ」

そんな様子を見て男は言った。

「…まあ、色々うまくいかない事もありますわなぁ…」

人間だもの、と男は付け足した。

「ありますねぇ…」

人間だもの、とゆゆこも真似をし付け足した。

「でもゆゆこ、小学校ん時から童話作家になりたいって言って今もやってんだから、凄いなぁと」

男はそんなゆゆこに感心の言葉を送る。

「凄かないさ。もう意地というかね」

ゆゆこは苦笑しながら言った。

そして隣にいる男を指さして呟いた。

「小中高ときて更に専門まで一緒だったこの腐れ縁のが相当凄いわ」

「相当ね。幼なじみと言ってくれたらいいのにね」

男は口元に笑みを浮かべ、言った。

そしてゆゆこに微笑みかけながら言う。

「…でも俺、この前の作品好きだったよ」

「…うん、ありがとう」

ゆゆこはどこか悲しそうな目で答える。

「一読者として楽しみにしてんだから。未来のゆゆこ先生」

「…うん」

————正しかったのだろうか、私の選択は

ゆゆこは曖昧な返事をした。

————クラスメイトに劣等感、先生からは死の宣告

『多伎駅前ー多伎駅前ー』

バスのアナウンスが流れる。

ふと、窓の外を見たゆゆこは目を見開いた。

————それでも、見てしまった

そこには、トラ、ウシ、ゾウ、サイのぬいぐるみがあるお店に入っていく姿が見えた。

————容赦なく、私の創造意欲をかきたてるもの



◆part1 END◆