ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ツギハギセカイ〜合作小説〜 ( No.18 )
- 日時: 2010/10/01 22:59
- 名前: 遮犬 (ID: cLZL9WsW)
「ボス、どうやら我らが集結させた世界の者たちがこちらのコピー世界へと紛れ込んだようです」
ボスと呼ぶ男は話しかけたボスという男同様に黒い装束を見に纏っていた。
殺風景とはいえがたい黒で覆われた部屋はまるで男の存在を消しているかのようだった。
「ふふ…いくら来ようとも無駄だ…。この世界での私は…神そのものなのだからな…!」
黒装束に包まれた男はただその場で事の動きを観察しているばかりであった。
「ってぇ〜…!」
奏は頭に降りかかる頭痛を必死で堪え、押さえながら立ち上がる。
「どこだ…? ここ…」
見るとそこは学校ではなく、林の中だった。
「さっきまで俺は学校にいたはず…」
自分の通っている高校、時雨咲高校の付近には林などなかったはず。
校内で地震が起こったというのにどうしてこんなところにいるのだろうか。
「…ッ! 夕姫は!? 暴風警報のみんなは!?」
辺りを見回すがどこにも人影らしきものはない。
「ここにいても無駄か…」奏はとりあえずこの林を抜けることにした。
奥へ進んでいくたびに皆の無事が気になる。暴風警報だけじゃない。学校のみんなも無事なのだろうか?
「ったく…不幸な体質だよな…」
いや、まだ自分はここにいて助かったからマシだったのかもしれない。ケガ一つも負っていないのだから。
そのまま歩き続けるとようやく林を抜けることが出来た。
「やっと抜けれた…? ここ…って…」
奏が出た場所は下一面見渡せる場所で眺めがよかった。ゆえに下の状態が見れたのだが
「本当に俺のいた世界か…?」直感でそう思った。
そこは確かに建物などの構造は自分のいた世界によくは似ているがどこか雰囲気が違った。
懐かしい感じもないし、まるで外国に来たような気分だった。
そしてそんな中、奏は少し下の茂みのところで誰かが倒れている姿を目撃した。
(俺と同じ生徒かもしれない…!)奏は一気に人が倒れているはずの茂みの場所へと駆け下りた。
「…! 夕姫! 鈴音ちゃん!」
倒れていたのは一人ではなく二人。それもどちらもよく知っている知り合いの内の二人だった。
同じ生徒会の会長の桜月 夕姫と書記の国枝 鈴音であった。
「大丈夫か!? しっかりしろっ! 二人とも!」奏は必死で二人を起こす。
「うぅ…」夕姫と鈴音ちゃんが両方眉を少々動かして生きている証拠を見せた。
(よかった…無事だった…)
喉元や心臓の音を聞いて確かめたかったがさすがにそれは男として無理だった。
「奏…?」夕姫が寝ぼけた顔で聞いてくる。こんな時になんだが、何か可愛く思える。
「あっ! セーブデーターがぁあああああ!!」いきなり鈴音ちゃんが叫びながら急速に起き上がる。
「うわっ! ビックリした…。何の夢見てたんでしょうね…?」一つため息を吐く。
とにかく無事でよかった。そう思えた。一人じゃ色々と精神的にも参りそうになる。
「とにかく二人とも、ケガとかないのか? どこか痛むところとかないか?」
「大丈夫。それよりここって…?」夕姫は寝ぼけていてどうやら気付かないようだが…
「…夕姫。その…服が乱れてるぞ?」出来るだけいいたいことを伝えようとした。
そう、夕姫は現在服が乱れてて少し見た目が危なくなっていた。
「はわっ!」とか可愛い声を出して鈴音ちゃんも共同反応。
「乱れてる? 髪? 寝てたからしょうがないかな…」
「違う違う。ポイントがいちいちズレてる(ます)」俺と鈴音ちゃんは両方声を揃えてツッコむ。
「え? じゃあ何が……ッ! ふぁああああ!!」
え、お前そんな可愛い声出したっけ?と思いつつも目を背けた。
「ちょ! こっち向かないでねっ! ていうか…見た?」
「見た? っていわれて頷く男はまずいないんじゃないか?」
「て、て…」
「え? どうした?」なにやら夕姫の様子がおかしかったのでチラッと見るが
「天誅〜〜〜!!」
鈍い音が俺の脳内を駆け巡った。
「ゴ、ゴホン…とりあえず…整理しましょう!」
服をしっかりと整えた夕姫が頬を少々膨らませ、顔を少々赤くさせながら人差し指伸ばしながらいった。
「俺は夕姫を心配してだなぁ…」今だ鳴り響く痛さが余計に俺の精神、肉体を苦しめた。
「うるさいっ! 反論しても無駄! …とにかく、今は何でこんな林にいるのかとか、わからないと…」
そのことに関してはごもっともだ。自分もそう考えたいた。
「でも…どうやって…?」鈴音ちゃんが満面の笑顔で言う。
「…どうしてそんなに笑顔なんだ?」興味本位で聞いた自分が間違いだということに俺は後から気付く。
「だって! こんなのRPGの世界じゃないですか! 異世界に巻き込まれた少年少女…ふふふ…!」
うん、なんだか知らないが鈴音ちゃんは一人でとても楽しんでいるようで。こっちは気が参るぐらいだが。
「RPGでいうと…そう! まずは城下町で情報収集が基本よね!」
「城下町って…城なんてないんだが?」
「こういうのは気分よっ! 気分!」
あぁ、そうかい。とか思いながらもふとある事が気になる。
「なぁ。そういえば…椿と有紀さんは?」
「え? …そういえば、いないわね…?」不意をつかれた顔をして夕姫が言う。
やっぱり気付いてなかったのか。にしても…
俺たち三人は一緒であの二人だけ離れるって…あの地震の時近くにいたはずじゃ…。
「あの二人がいなかったら戦闘力が…」明らかにRPG感覚で状況を見ている鈴音ちゃんはさておき
「でもあの二人のことだからもうとっくに城下町で情報とか入手してるかもよ?」
「まぁ…確かにそうかもしれないけどな…」
あの二人、椿と有紀さんならそれぐらいのことは難なくやってしまい
いきなりスタート時点から一気に魔王の場所まで駆け込んでやっつけてしまうぐらいだとは思うが…
何かがひっかかる。別に俺は江戸川コ○ンみたいになったつもりは微塵もないが…
「気にしててもしょうがないよ! 行こう! いざ、城下町へ!」
夕姫が立ち上がってそこらに落ちていた枝で下に見える城下町とやらを指す。
「おーっ!」そしてそれに賛同する鈴音ちゃん。やれやれ、お気楽だな。
それにまだここが異世界かどうかも決まってないというのに。
本当にここが自分たちの世界なのかも知らずに三人は歩き出した。