ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ツギハギセカイ〜合作小説〜 ( No.20 )
- 日時: 2010/10/05 22:44
- 名前: Nekopanchi (ID: 0inH87yX)
一人の高校制服を来た、見るからにごく平凡な高校が仰向けに倒れたまま、けだるそうに呟く。
「……訳がわからねえ……」
直哉(やみけもの主人公)は何が起こったのか全くわからなかった。というよりも、考える事すら面倒に感じた。いや、考える事すら面倒になるほど短期間に信じがたい事が立て続けに起こったのだ。まず知らない森に迷い込み、次に少女に殺されかけ、そうかと思えば新しく現れた犬神とやらに親切に説明され、やっとこさ和解したと思えば、空にヒビが入って、地面が割れて、穴に落ちて……
「……くそっ……頭がどうにかなりそうだ……」
直哉はいくら考えても答えが出ないのを悟ったのか、考えるのをやめ、立ち上がる。
見回してみると、一見何の変哲もないごく普通の世界だったが、なにせ先程まで普通じゃない世界に居た為、直哉自信何が普通なのかわからなくなっていた。
そして数秒ほど見回していると、十メートル程前方にまるで神社の神主が着る様な服を着た、首から下が人間、首から上が犬、というまんま犬人間が仰向けに倒れていた。
間違いない。先程まで親切に説明してくれた犬神だ。直哉は衝動に任せ、犬神に駆け寄る。
「おい! 大丈夫か!? おい!!」
「……む……う……」
大声を上げながら身体をゆさゆさ揺すると、犬神は小さなうめき声の様なものを漏らしながらゆっくりと上半身を起こした。
「……そんな近くで声を張り上げなくても聞こえている。大丈夫だ」
犬神は半ば欝陶しそうにそう言うと、ゆっくり立ち上がって辺りを見回してから直哉を見た。
「あー、すまないが名前を聞いていなかった。教えてくれ。」
「え、あ、ああ。……直哉だ 漣 直哉」
「ふむ、では漣、名無しはいなかったのか?」
「……あ」
直哉は言われて初めて気付いた。確かに穴に落ちるまで一緒に居た少女がいない。
何度も辺りを見回してみるがやはりどこにも見当たらない。
犬神はそんな直哉を見て名無しがいない事を理解したらしく、眉間にシワを寄せる。
「ふむ……弱ったな、こうなる事だけは避けたかったのだが……」
犬神は深くため息を吐くと、スッと立ち上がり、言葉を続ける。
「……まあ、こうなってしまった以上は仕方ない。名無しを探しに行くぞ」
「……何でそんな冷静なんだお前……」
俺がそう言うと犬神は苦笑してから直哉に背を向け、ゆっくりと歩き出す。
「伊達に長年生きてないさ。歳をとると大概の事には驚かなくなるものだ。さあ、ついて来い漣。」
「あっ、ああ」
既に少し先を歩いている犬神に、半ば小走りで追いつく。
……………………………………
「なあ漣、ここは、どこなんだと思う?」
数分程歩いていると犬神が唐突に言葉を投げかけて来た。
「……どこって……なんでそんな事を聞くんだだよ?」
質問されたにも関わらずに、つい質問返しをしてしまった。
「……これはあくまで俺の感覚なんだが……結界の感じがしないんだ。」
犬神の様子はいつもと比べて少し程だが明らかに戸惑っていた。言葉からもそれがわかる。
「……さっきの穴に入った事で結界の外に出れたのか?」
「……いや、結界の外というより……まるで世界自体が違う様な気が……」
「……世界が違う? 別世界って事かよ?」
「……わからん、それに今は名無しを見つける事が先決だ」
そういうと犬神は歩みを早めた。
「あっ、おい待てよ!」
直哉は犬神を小走りで追いかけた。
こうして一人の『世界に迫害された人間』と一人の『妖怪』は……ツギハギの世界へと足を踏み入れて行った……
〜つづく〜