ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ツギハギセカイ〜合作小説〜      ( No.23 )
日時: 2010/10/14 20:27
名前: るりぃ ◆wh4261y8c6 (ID: ArSvzc8N)
参照: 塾PCから

——このツギハギの世界……

「五月蝿い!!」

黒髪にポニーテール。赤い瞳の人物は、額に青筋を浮かせながら勢い良く起き上がった。
その人物の名前は紅 冷嘉。三日で忍者関東東北支部全滅という伝説を持つ。
そして戦うときの禍々しい覇気と殺気、黒ずくめの服装から恐れと尊敬をこめて『黒夜叉』と呼ばれている。
冷嘉は耳元でささやくのはいったい誰だとあたりを警戒しながら見回す——…と、同時に自分の置かれている状況に気が付いた。

「これ、は…」

あたりに生い茂る木々。崖。
そしてワアーッ、と地面まで揺るがしていそうな雄叫びが空気を震撼させている。
首を巡らすと緑が色濃い山の中で、軍服を着た人たちが刀や槍を片手にそこかしこで打ち合っているのが見えた。
そこに運悪く、刀片手に二、三人の男が冷嘉に向かって斬りかかってきた。

「殺せ殺せえええ! 一人でも多く倒して名を上げろおおお!!」
「おぉおおおおおっ!」

奇妙な格好をしていても、戦場に居るのならば倒す敵。
気合いともとれる掛け声と同時に刀が冷嘉の肩に沈む———はずが、ガツッと刀が土を喰ったのを見た瞬間、男は横っ面を殴られて吹っ飛んでいた。
吹っ飛んだ男が先程までいた場所には拳を固めたままの冷嘉の姿。
続いて繰り出される刀を裏拳で叩き退かし、男の顔面に正拳突き。
メキッと嫌な音を立てた鼻を押さえて男が両膝を着き呻く。
3人目の男が横に凪いできた槍を屈んで避け、その姿勢で懐に入ったところで腰をひねり全体重をのせた拳でアッパーをかました。

「あがっ…!」
「鼻! 鼻が痛ェ!」

完璧にキマまったアッパーに、3人目の男がその場に倒れる。
冷嘉はそんな男たちを無視して考えだした。

どういうことだ、これは…

そう、この状況は、冷嘉が現代から異世界に飛んだ時に起こったことそのものなのだ。
冷嘉は兵士をさりげなく蹴り飛ばすと山の中で戦っている兵士たちを見やる。
戦っているようすも、冷嘉が今さっき倒した兵士も、何もかもがあの時と同じだ。
だが、違う事が一つ。

「何故…月が二つあるんだ…」

それは暗雲立ち込める空に浮かぶ月が一つではなく、二つで、そして赤と紫色をしていると言う事だ。
冷嘉は暫く月を見上げていたが、はっと我に返り、地面をけって木の上に上がった。

「あの時と同じ行動でも…してみるか…」

冷嘉はふっと口角を上げて、にたりと笑んだ。
そして、次の瞬間。
冷嘉の姿はその木の上から消えていた。