ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ツギハギセカイ〜合作小説〜 ( No.28 )
- 日時: 2010/11/03 10:02
- 名前: いち ◆ovUOluMwX2 (ID: PmZsycN0)
- 参照: http://www.dejavu.jp/~webmaster/upbbs/users/test/img/1286535744.jpg
『幸せとは、それと同じだけの不幸せから成り立っている』
誰が言った言葉だったろうか…
誰が言ったのかすらも思い出せないこの言葉を彫りこんだペンダントを、もう何年つけただろうか。
俺はあまり細かい事を考えない。
ただ、楽しければそれでいいってのが信条だ。
なのに、この深い言葉にだけは強く心を引かれる。
まったく困ったもんだ。
一応はクールな2枚目を目指しているが、まだまだ先は遠いようだ。
「………ま、見た目は完全に2枚目だな」
鏡の前で自画自賛していると、ポケットの携帯電話がなった。
「ん、もしもし」
『アイリス様、作戦の進捗情報をお願いします』
電話をかけてきたのは今回の作戦のアドバイザーだ。
「順調だよ。すでに遠野秋夜はツギハギセカイに招待済み。うまいこと黒いお方の組織にも幹部として乗り込んだ。あとは…時を待つのみ、さ」
『了解しました。マスターに報告します』
「ああ、よろしく」
電話を切って、再び俺は鏡を見つめた。
「やっぱ俺2枚目だよな……」
「………ん」
冷たい地面の感触。
俺は、寝ていたのか……?
ゆっくりと体を起こし、周りを確認する。
ここはどこかの町のようだ。
周りに高層ビルが立ち並んでいる。
「ここは……?」
何が起こったのかを整理してみる。
確か、ロストアイランドで黒い穴に吸い込まれたんだっけ……?
そして、気付いたらここで倒れていた。
ということはつまり
「ここは…異次元、てことか?」
改めて周りを見渡す。
けど、俺が元々いた世界とあまり変わっているようには見えない。
「とりあえず、調べてみるか…」
目の前の方向に、大きな建物があるな。
行ってみるか。
足を一歩踏み出したその時—
「侵入者だ!!」
突然、どこからともなく黒い服を身にまとった男たちが出てきた。
人数にして、ざっと100人はいる。
「アンタたち、誰だ?」
リーダーと思われる男が一歩前に出て答えた。
「この世界のものでは無いな? 貴殿は何者であるか? 速やかに答えよ」
俺は滅華に手をかけながら答えた。
「俺は遠野秋夜。アンタたちがこっちの世界に俺を招待したんじゃないのか?」
男は一瞬怪訝な表情を浮かべると、直ぐに答えた。
「知らんな! どこから来たのかは知らないが、異物は排除するのみ!!」
その言葉とともに男達が一斉に銃を構える。
「ったく……名前聞く必要あったのかよ?」
「墓石には名を刻まねばなるまい?」
リーダーがニヤリと笑った。
「やれ!!」
一斉に銃弾が放たれる。
と同時に、俺は上に飛び上がった。
外れた銃弾が当たり、何人かが倒れるの確認すると、俺は滅華を抜いた。
「刃桜!!」
上空から刃桜を落とす。
だが、敵もバカではない。
すばやく散開すると、それぞれ近くに会った高層ビルの中に入っていった。
おそらく、中から狙撃するつもりだろう。
とすると、ここにいるのは危険だ。
俺も近くのビルに入り込んだ。
さて、どうするか……
ゲリラ戦なら、数で圧倒的に勝る相手が有利だ。
こちらから動いて、さっさとケリをつけるしかなさそうだ。
ビルの中を見回してみる。
すると、『EMP』とかかれたドアが目に入った。
「これは………!!」
全ての「準備」を終えて、俺はビルの中から飛び出した。
一斉に、銃撃が浴びせられる。
刃桜で防御しながら、弾道を読む。
敵は6つのビルに隠れている。
つり出すのは案外上手く行きそうだ。
あとは、時間がたつのを待つだけ。
その後、さらに10分近く銃弾を防御していると、街灯が一瞬明滅した。
「来たか…………!!」
俺はタイミングを計って再びビルの中に隠れた。
10秒後。
町の明かりが、全て消えた。
辺りは暗闇に包まれる。
そして、俺は最後の一手を打つ。
「お前達の相手をしている時間は無いんだ!! あばよ!!」
と言えば—
「ちくしょう、逃げられるぞ!」
「追え、ビルから出るんだ!!」
全員、ビルから出るよな…!!
俺はビルから出てきた男達の前に立ちはだかった。
「! 貴様……!! 何をした!!」
リーダーが俺に気付いたらしく、銃を構える。
あわせて、他の男達も銃を構えた。
「EMPって知ってるかい?」
「なんだと……!?」
「電磁パルス爆弾だ。使えば人体に一切影響を及ぼさずに周囲の電子機器をダメにする。例えば、町の街灯でもね…!」
「貴様、まさか……」
「そうさ、俺の狙いは、何も見えなくして、あんたらをつり出すことだった。でもただ暗くしたんじゃ動かない可能性が高い。だから、ずらかるふりをしたんだ。結果は……言うまでもないよな?」
「くっ………それがどうした!? 我らは100人近くいるのに対し、貴様はたった1人ではないか!!」
「さあて……そいつはどうだか?」
すると、リーダーは激昂して
「撃てえっ!!!」
この暗闇の中、たった1人の標的を撃てという無茶な命令を下した。
無論、それこそが俺の狙いでもあったけど。
俺は再び飛び上がり、滅華を構えた。
「華嵐」
荒れ狂う嵐は、男達を巻き込み、全てを吹き飛ばした。
ちょうどその時、予備電源でもあったのだろうか、街灯がつき始めた。
男達は全員倒れ、立っているものは誰もいなかった。
「どうやらこの世界には歓迎されてないらしいな」
俺はゆっくりと町を歩き始めた。