ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ツギハギセカイ〜合作小説〜      ( No.29 )
日時: 2010/11/06 20:26
名前: るりぃ ◆wh4261y8c6 (ID: LE5EeDLA)

気がついたら雪の上に寝転んでました。まる。
……あれ、作文?
あ、いや、そうじゃない。落ち着けアタシ。Return(戻ってきなさい)いつものアタシ。
よし、落ち着いたところでまずは現状把握。
箇条書きにしてまとめてみようと一人つぶやくと、アタシはそこらにうもれていた木の棒を引っこ抜いて……
あ、バキッて音した。木の枝だったのか。
まぁとりあえずその木の棒で現状を箇条書きにしてまとめてみる。

・雪の上
・鬼寒い
・人気ナッシング
・自分の持ち物は通学用鞄と刀

うん。まったくといって良いほど此処が何処かわからない。
あああ、しかもこのままだったら凍死する。
現に手がガックンガックン震えてるもん。
ガクガクってレベルじゃなくて本当にガックンガックン。
自分のことなのに驚いた。人間ってこうなってるんだなぁ。
とりあえず、刀とか鞄はある。山賊に何か奪われたりした形跡も無い。そして、私以外の足跡もない。
ははっ、アタシここで死ぬのか。
だけど、アタシはまだ生きるつもりだ。
たとえ此処でアタシが死ぬことが神の決めたことだとしても

「アタシは絶対に生きてやるんだぁぁあああ!!」

力の限り叫んだら、なんか急におなかが減ってきたなぁとかのんきなことをおもいつつ、アタシは鞄からタオルを取り出して頭に巻く。
熱は頭から奪われていくらしいからね!
あ、少しだけ寒さが、マシになった気がする。
アタシははふぅとため息をつくと、あたりを見回して首をひねる。
この風景、な〜んか見覚えがある気がしてならないんだよなぁ…
アタシは奪われていく体温と上手く働かないアタシのちっぽけな脳みそをフル回転させて考える。
だけどやっぱりアタシは馬鹿だから、考えることに飽きて半ばやけくそ気味に頭に浮かんだセリフを叫んだ。

「世界をこじあけるのだ!」

なるべく低い声で、右手を挙げた。
あ、僕が一緒に行くよ秀吉、でも良かったかもしれない。
とにかくテンションをあげたかったんだよ。
ここに人がいたら確実にアタシの意味不明な行動に酔うね。うん。
まぁ、とりあえずここにいても仕方が無いということは無駄に時間を掛けたけれどわかった。
テンションゲージも上昇したことだし移動するかな
重い腰を上げ、よっこらしょと立ち上がる。
よく「お前は婆か」とかいう視線で見られるけれど、アタシは結構ポジティブなほうだから気にしない気にしない。
心中でぶつぶつとつぶやきながらさくさくと歩いていったら、湖があった。
あるぇ? こんなところに湖? しかも氷張ってないし。
ためしにその湖に指先を突っ込んでみた、ら。

「……あったかい。」

此処は温泉だったんですか、オケ把握。
ああ、そういえば冬の寒いときに入る温泉ってあったかいよね。
はいっちゃおうかなぁなんて思って手首までつけてちゃぷちゃぷと音を鳴らすと、シュッと言う音と、ドスッと言う鈍い音が聞こえた。
恐る恐る後ろを振り返ると、後ろの雪にはクナイが刺さっていた。
寒さで体力が削られてなかったら、確実にギャースとかいう奇声を発しながら戦国ドライブ発動して発光していたね、うん。
ついでにパニックでBASARA技も発動していたかも。
でも残念ながら私の戦国ドライブ&BASARAゲージは半分ほどしかたまっていないようだ。
な〜んだ。つまんねぇの。
とか言う声が少年のショタボイスで聞こえた。うん。幻聴だね。うわぁ怖い病気。
そうやって現実逃避しても、現実は変わらないわけで。
低く、ドスの聞いた声が耳に響いた。

「おい、貴様。何者だ。」

何者って聞かれても此処が敵地か自分の地かわからない以上、自分の名前をうかつに名乗るわけにはいかない。
う〜ん。困ったなぁ。
そう考えてアタシが黙っているのを見た(?)その人は、アタシが無視していると思ったのか、怒りを滲ませた声で「答えろ」といってきた。
とりあえず、偽名と嘘っぱちを語っておくか。
もちろん。口調も普段とは変えて。

「私(わたくし)の名前はシロにございまする。盗賊に襲われ、意識を失って気がついたらここにおりました。」

その人は、しばらく黙っていたが、やがてアタシの前に姿を現した。
黒尽くめ、黒い頭巾という格好と、先ほど投げてきたクナイからしておそらく忍。
アタシが気を緩めていた所為かもしれないが、一応総大将であるアタシに気配を感じさせなかったところから、かなりのてだれだろう。
アタシが彼をじろじろと観察していると、彼はゆっくりと口を開いた。
いや、頭巾の所為で目しか見えないけどね。

「では、街に案内してやろうか?」

忍の癖にめっちゃ親切だなオイ。それでいいのか忍。
とか一瞬思ったが、監視して怪しい行動があったら後ろからグサッかもしれない。
そして、忍さんの視線が一瞬だけ、一瞬だけ右……東のほうを見たことから、東にある何かから遠ざけようとしているのだろう。
おっといけない、ここでまた黙っていたら怪しまれるね。

「はい。ありがとうございまする。」

すくっと立ち上がると、丁寧に頭を下げる。
あ、やべぇ。
最近皆から姫のような立ち振る舞いと礼儀作法とか習っていたから、どこかの武家の姫なんて思われてもおかしくない行動をしちまった。
アーッ!! まさかこんなところで失敗するとは! アタシ生きるための狡賢い演技なら自信があったのに!!
アタシが笑みの表情のまま心中でそう思っていると、忍さんがいきなり手を出した。
え、なんすか?

「こっちへ来い。街はこちらだ。」

ああ、いくときにはぐれないようにですねわかります。
そしていざとなったら逃げられないようにするための。
アタシはありがとうございますなんていって笑みを顔に貼り付けながら、その忍に手を引かれるままに雪の中を歩いていった。