ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ツギハギセカイ〜合作小説〜 ( No.34 )
- 日時: 2010/11/09 23:33
- 名前: いち ◆ovUOluMwX2 (ID: PmZsycN0)
- 参照: http://noberu.dee.cc/bbs/dark/read.cgi?no
静寂。
それだけが、この町を包んでいる。
俺に聞えるのは、自分の足音だけだ。
「ダメだ……分からない」
もう1時間近く歩き回っているが、ここがどこかも分からない。
暗いから夜だというのは分かるが、正確な時間は分からない。
何よりも今、必要なのは情報だった。
何でこんなところに飛ばされたのかは知らないが、さっさと戻らないと…
第2ステージがどうなったか心配だ…
こんなところで、足止めを食っている暇は無い。
さっさとこの町を出ないと……
焦りだけが増え、一向に何も見当たらない。
おかしいところなら、いくつもある。
まず、この町の名前が分からない。
町なら、どこかに町の名前が入った施設があるはずだ、それが見当たらなくても、標識などに必ず名前は入っている。
さらには、人の気配がないこと。
今が仮に真夜中だとしても、町中全てのビルが真っ暗なんてことがありえない。
さらにはEMPだ。EMPは論理的には証明されているが、実際に製造するのは不可能だと言われている。
非公式に製造されているという噂もあるが、いずれにしろそこらのビルに転がっているような代物ではない。
それだけの科学技術がありながら、特に荒廃した様子もない町に、人がいない。
どう考えても説明がつかなかった。
まさか、新たなステージに突入したのか?
違う。SURVIVAL GAMEは参加者同士の殺し合いを本分とするはず。あんな黒服の軍団などよこさないはずだ。
そう考えると、この町には何らかの組織的活動をするやつらがいるってことだ。
おそらくはそいつらによって、俺はこの世界に招かれた。
この町には何かある。
そう確信したとき—
背後に気配を感じた。
滅華に手をかけ、振り向く。
するとそこに、男が立っていた。
「やあ、遠野秋夜君」
「誰だ」
男は芝居がかった仕草で青い髪をかきあげた。
「俺はアイリス・スカイバーンだ。君をこの世界に招いた張本人さ」
アイリスと名乗った男は、薄く笑っている。
「だったら、元の世界に返してもらおうか」
「まあ、少しはゆっくりしていけよ。ここにいる間、あっちの時間は止まっているんだからさ」
「……? どういうことだ?」
するとアイリスは上着からリモコンのようなものを取り出すと、なにやら操作した。
「見たまえ、秋夜君」
アイリスが指差した方向を見ると、ビルのガラスに映像が映っていた。
「……これは」
そこには、ロストアイランドが映し出されており、不自然な格好で動きを止めた仲間達の姿があった。
「信じていただけたかな?」
アイリスが再びリモコンをいじると、映像は消えた。
「あんた何者だ」
「君のすべてを知っている者さ」
「ふざけるな!」
俺は滅華を抜くと、アイリスに斬りかかった。
アイリスはニヤリと笑うと、小さくつぶやいた。
「……金」
すると、俺とアイリスの間に突然壁のような物体が飛び出してきた。
「……!?」
俺は攻撃をやめ、後ろに下がった。
しばらくすると、壁の横からアイリスが現れた。
「将棋はやるかい、秋夜君?」
「……将棋?」
アイリスは不敵に笑いながら壁をパンパンと叩く。
「王を守るのは金の仕事だ、だろ?」
「……まさか」
よく見てみれば、壁は将棋の駒の形をしていた。
そこには、金と大きく書いてあった。
「こいつの名前はショーギソルジャー。ま、レアウエポンって言えば話は通じるかな?」
「レアウエポンだと……!!」
この件にはSURVIVAL GAMEの主催者マスターまで関わっているのか…!?
「まあ、驚くよな〜…お察しの通り、俺はマスターの部下さ。キミをこのツギハギセカイに招くように命令された」
「ツギハギセカイ…」
「そう、この世界の特徴は融合だ。あらゆる世界を再現させたまさに継ぎ接ぎの世界。この町も、キミの世界をモデルにしたんだけどな…」
「俺の世界…」
「忘れたのかい? ここは君の住む町、風谷市の都市部だ」
「………!!」
そうか、そうだったのか。
言われるまで、分からなかった。
言われてみれば、どこもかしこも見覚えのある風景だ。
何で気付かなかったんだ……
「まあ思い出せないのもしょうがないか。長いこと生きるか死ぬかの境界線に立っていたんだからな。記憶が飛んだんだろ」
アイリスはそういうとクククと笑い、『金』の駒を倒した。
そしてその上に乗ると、駒は浮き上がった。
「じゃあな、秋夜君。次に会えるのを楽しみにしているよ」
そう言い残し、アイリスは空へと去っていった。
「ツギハギセカイ…結局情報はそれだけか」
「いたぞ! 遠野秋夜だ!!」
「捕まえろ!!」
ちょうどいい、情報源がやってきた。