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Re: ツギハギセカイ〜合作小説〜      ( No.39 )
日時: 2010/11/15 06:46
名前: 桜音ルリ ◆sakura.bdc (ID: A6MC5OIM)
参照: 桜音ルリ=るりぃ

「やはり、あの時と同じ、か……」

冷嘉は敵本陣の真上の枝に腰を下ろし、下でふんぞり返っている敵大将を診ながら呟いた。
と、その時。
冷嘉は木の枝に足首を掛けたまま宙吊りになった、と同時に冷嘉がいた場所をクナイが通っていく。
冷嘉は足首をその木の枝から離すと、まるで中空を飛ぶように走って、姿を消した。
冷嘉が姿を消したところにちょうど現れた忍らしき黒装束のものは、冷嘉を探してあたりを見回した。
そして、その刹那。
彼の真後ろに現れた冷嘉が彼にむかってクナイを振り下ろす。

「消えうせろ。」

断末魔の叫び声をあげながら敵本陣に落ちていく彼をみて、冷嘉は嘲笑を浮かべた。
だが、彼が敵本陣に落ちたことにより、冷嘉の存在が気づかれてしまった。

「ええい! 何奴!」

「曲者め、ひっとらえよ!」

冷嘉は無言で地面に降りると、刀や槍をもって突進してくる相手を片っ端から殴ったり蹴ったり、時たま人を盾にしたり投げ飛ばしたりしてあっという間に一番隊を壊滅させた。
冷嘉は、爆弾抱えたまま突進してきた相手を絡めとって、本陣に向かって力の限り放り投げた。

ドッガァアアアンッ!!

盛大に煙が上がるとともに爆風で幕がすべて吹っ飛んだ。
たーまやー、と内心で思っていると煙の中から何かがバタバタと出てくる。

「ッ!? なななな何事だっ!? 八咫烏軍はまだ先と言っておったではないか!」

「す、すいませんローエガルデ様! ご無事でございますか?」

「無事ではない! 私の高貴な顔がすすで汚れたであろう!?」

部下らしき者を数名従えながら、でっかい扇でバシバシ部下を叩くキンキラの軍服の男。
ああ、やはりこれもあの時と同じなのかと思いながら頭を抱えそうになるも、二人の会話に違和感を感じて首を捻る。

「ローエンガルデ?」

そう、敵将の名前があの時と違っていたのだ。
そして、敵対してこれからこちらにやってくるはずの軍の名前も違っていた。

「八咫烏……」

八咫烏は、冷嘉があちらの世界で探していた烏魔 蓮のシンボルマークだ。
もしかしたら、蓮に会えるかもしれない。
冷嘉はそう考え顔を綻ばせかけるも、すぐにもとの無表情にもどった。
いや、そんなことは無いな。そんな奇跡など起こるはずが無い。
冷嘉は内心で己を冷笑する、と背後からすごい声量で叫ばれる。

「総大将、ローエンガルデ殿とお見受けする!」

思わず片手で耳を押さえ、後ろを振り返る。
と、そこにいたのは蒼がかかった黒の短い髪に漆黒の瞳、左手首に黒地に青い星のリストバンドをしている少女……烏魔 蓮がたっていた。

「蓮!!」

「冷嘉姉!?」

「私を無視するな!」
「放て!」

二人で向かい合っていると、おそらく注目されることが好きであろう(なんせキンキラの軍服だ)ナルシスト野郎が、駄々をこねた。
まるで計ったかのように次の瞬間、雨のような光の矢の嵐。
直ぐ様、足元に転がっていた槍を足の甲で掬って掴み、払って防御する。
火矢も交ざって飛んでくるのでそれも、後ろに下がって回避。
丁度、蓮の隣に並んだ。
その身のこなしに蓮が微笑む。

「やっぱり冷嘉姉だ。」

「ゆっくりと話し合いたいところだが、今はそうも言ってられないようだ。いっきにいくぞ、蓮。」

「あいさ! 了解!」

「前見ろ、前!来ているぞ!」

でかい刀をぶんぶん回転させながら大男が迫ってくる。
蓮は何か言い掛けてたが、冷嘉は途中で遮り、蓮の脇を擦り抜けて大男に突進する。
地面すれすれであろう程に身を屈めて刀をやり過ごし、槍で大男の両足を斬り付けた。
大刀を手放して、崩れる大男の顔を踏み台に跳躍。
飛んできた火矢が、大男に当たって炎上した。
とんぼをきって着地し、射手を蹴散らす。

「おいおい…」

冷嘉は眉をしかめてナルシスト野郎の居るほうに視線をやると、どさくさににまぎれて逃げようとしていた。

「逃がさない!!」

それに同じく気付いたらしい蓮が、そこかしこから増えては現われる雑魚を薙ぎ倒しながら追い掛ける。
が、次の瞬間。
蓮の背後からキンキラ集団のうち1人が襲い掛かった。
蓮は背後の気配に気付いたのか身をかがめてかわそうとするがそれも間に合わず。
蓮の背中に刀が突き刺さるその瞬間。
冷嘉は手にもっている槍でその刀を叩き折り、蓮に襲い掛かった男を突き刺し、野球バッティングのポーズをとる。

「伏せろッ!」

蓮に言いざま、思いっきり槍を振る!
人が先にぶら下がっている分の遠心力が加わって、風を切る尋常じゃない音がした。
狙うは白い白馬に乗ったナルシスト野郎!

「いけッ!」

男に刺さっていた槍は空中で抜けて地面に刺さった。
まるでホームランの様に綺麗な放射線を描きながら、男が宙を飛ぶ。
その異様な光景に、敵味方もぽかんと口を開けて男を目で追った。
人生最期の最高注目度をあびながら、男は見事にナルシスト野郎に激突する!

「ゲフゥッ!?」

背中の衝撃に驚いたのか、白馬がヒヒーンと鳴いてもの凄いスピードで走り去っていく。
冷嘉は馬に振り落とされ、その上から男に乗られてじたばたもがいているナルシスト野郎に近づくと高速で往復ビンタを食らわせる。

「ヘブほおッ!!」
「汚なっ……」

鼻血と鼻水が混ざり合ったような液体を飛ばし、ナルシスト野郎が気を失った。
なんだかこいつには、無性に腹が立ったので、元本陣に行く前に、顔を思いっきり踏みつけておく。
そして、目の前で呆然としていた蓮に冷嘉は優しく声を掛けた。

「怪我は無いか? 蓮。」

「うん。大丈夫。」

冷嘉はそういって微笑む蓮に微笑み返すと、顔を引き締めた。

「では、何があったのか。せつめいしてもらえるな?」

蓮は冷嘉の問いに一瞬躊躇の表情を見せたが、すぐに頷いて口を開いた。