ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ツギハギセカイ〜合作小説〜      ( No.49 )
日時: 2010/11/22 18:11
名前: 紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE (ID: .RPx9Kok)

「1番区・・・ですか」
「そうだ」
黒い服を身に纏った男達の一人が確認したのを、バイオレットは素気ない返事で返した。
「お前達は一番区の侵入者・・・『遠野 秋夜』の捜索、及び始末に当たれ。
 俺は12番区にいる裏切り者・・・『イエスタディ』の方を担当する」



「餓鬼め・・・新入りのくせに偉そうに・・・」
バイオレットが去った後、黒い服装の男達は彼の悪口を零す。
「更にはアイツなんでも、『招かれざる客』の一人らしいぜ・・・」
「あんな得体の知れない奴を信用するなんて、ボスは何を考えているんだか・・・」
「・・・俺としちゃあ、ボスも信用できねえよ・・・」
「お、オイ馬鹿・・・!」
「だってよ・・・顔も見た事ねえ、そもそもいるかどうかもわかんねえ奴だぜ・・・!?
 今考えたら、そんな奴の為に命をかけること自体・・・」

次の瞬間、うぐっ、と低い声と共に男の顔が苦痛に歪み、男は床に倒れる。

「お・・・おい!?どうした!?」
「あ・・・うぐ・・・く、くるし・・・
 だ、れか、たすけ・・・」
「オイ!?しっかりしろ!」

彼がそう叫ぶもむなしく、男が何かにすがるように空中に伸ばした右手は力無くごと、と床に墜ちた。

「・・・心臓が、止まっている・・・」
「・・・まあ、今の俺達にわかるのは・・・

 この世界でボスに逆らったら死ぬ、ってことぐらいか」






街灯だけが頼りなく道路を照らす漆黒の街の中を、一人の少女がひたすらに、
何かから逃げるように走っていた。
少女は少し彼女の体のサイズより大きい白いセーター、
青いミニスカートを着て、セピアのブーツを穿いている。
ミニスカートの下にはタイツを着用しているようだ。
首元には灰色のマフラー、頭には白い毛糸の帽子。
彼女が一歩前に進むごとに、帽子からはみ出した、少しくせのある紫色のショートカットの髪が揺れる。

「はあっ・・・はあっ・・・!」

だいぶ長い距離を走って来たようだ。少女は急に立ち止まると肩で大きく呼吸をする。

「・・・誰か、早く『味方』を見つけないと・・・」
少女は尚も荒い呼吸で、誰ともなく呟く。
見た感じ、少女は15歳前後といったところだろう。十分に『美少女』の分類に入る容姿である。

「・・・そうだ・・・!」

ふと、少女が何かを閃いたように言う。
「遠野秋夜・・・彼なら、きっと・・・」
そう、彼女は少し以前、『あの男』が招待した男を思い出したのだ。

彼は他のどこでもない、『この世界』に連れ込まれている筈だ。
恐らく、もう既に『この世界』のどこかに居る筈。

『ボス』に自分が殺される前に、『遠野秋夜』を見つけなければ・・・!
少女は、そう決心した。



・・・漆黒の仮面と衣服を纏った『バイオレット』が、
彼女のすぐ上の摩天楼にいるとも知らずに。