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Re: ツギハギセカイ〜合作小説〜     第1話更新開始 ( No.5 )
日時: 2010/09/19 01:30
名前: Nekopanchi (ID: AWGr/BY9)

今現在、妖怪の存在を信じる者は少ない。否、実際の所、信じている者など一人もいないのかもしれない。
だがそれも無理の無い話だろう。
一度も見た事の無く、なおかつ己の想像を越える物は、例外無く創作物やフィクションにする、それはもはや人間の性なのだ。
……昔の浮世絵や文献などには数え切れない妖怪が登場する。現代の人間は己の性のまま、これを昔の人物が創作した空想の生物と割り切っているが、本当にそうなのだろうか、今も妖怪達はどこかで存在しているとは考えられないだろうか。……誰かにこう言ったとしても、ただのイカレた奴としか見られないのだろう。

……だが、今現在も妖怪達は確かに存在している。それは結界に仕切られ、人類とは完全に隔離されてしまっている場所だが、妖怪は、日本に存在しているのだ。 

そして、隔離されてから何百年も経過したある日、そこに一人の人間が迷い込んだ。
迷い込んだ人間は二人の妖怪と遭遇し、何とか和解した。

……ツギハギの物語はここから始まる


「あー……つまり……ここは何百年も前に結界隔離された世界って事か!?」

一人の青年が素っ頓狂な声を上げた。その青年はごく普通の高校制服を着ている、見る限り何の変哲も無いただの人間だ。

「ああ、まさにそういう事だ。」

それに答えた者は高校制服を着ている青年とは異なり、人間の姿をしていなかった。身長は190cmを越える長身、それだけならただの背が高い人間だが……首から上、すなわち顔が犬そのものだった。ちなみに首から下は人間と変わり無い肉体で、まるで神社の神主が着る様な生地の白い服を着ている。

「そレで、これかラどうすルの犬神?」

黒を基調としたワンピース調の服を着、背中にカラスの様な漆黒の翼を生やした小学生低学年ほどの少女が二人に歩み寄った。

「……ふむ、そうだな、とりあえず俺達ではどうする事もできん、ひとまず……」

犬神と呼ばれた者が言葉を話している最中、突然異変が起きた。……亀裂とも言えるヒビが空に入り始めたのだ。

「お、おい!! ありゃなんなんだ!? 空に……ヒビが入った!?」

青年が明らかに慌てた様子で犬神に答えを求める。……だが慌てているのは犬神とて例外ではなかった。

「し、知らん!! 俺もこんな現象を見るのは初めてだ!!」

犬神が珍しく声を荒げていた。それだけ異常事態なのだ。

「ま、まア、確実に言えル事は……」

少女も青ざめた顔で苦笑いを浮かべる。

いつの間にか、少女達の足元にもヒビが入り始め、かなり速いペースでピキピキと架空の音を立てながらヒビはどんどん範囲を拡げていった。

「……かなリまずイよ、この状況……」

少女が苦笑いを浮かべ、短く呟いたその瞬間、足元のヒビが地割れとなり……

「うおおおおおおおおお!? なんだこれえ!!!!」
その場に居た三人はほぼ同時に……

「知らんと言っている!! だがとりあえずバラけるのはまずい!! 二人とも、俺に捕まれ!!」

地割れで空いた底が見えない穴に……

「……な、なンで羽根を羽ばたかセても飛べなイの……!? お、落チる……!! 落ちルぅ……!!」

飲み込まれていった……