ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ツギハギセカイ〜合作小説〜 ( No.50 )
- 日時: 2010/11/22 19:10
- 名前: 紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE (ID: .RPx9Kok)
突如空中からひらり、とまるで蜘蛛の如く舞い降りたその男。
その男を見て、少女は冷や汗をかかずにはいられなかった。
「・・・見つけたぜ、『イエスタディ』」
「その声・・・『バイオレット』・・・!」
「・・・お前を始末する」
言うなり、『バイオレット』は駆け出し、一瞬で少女・・・『イエスタディ』の目の前に。
「っ・・・!」
バイオレットの眼にもとまらぬ速さの蹴りを、イエスタディは腕で何とか防ぐ。
「あうっ!」
しかし蹴りの衝撃で、そのまま左に吹っ飛ばされ、壁に激突する。
「つぅっ・・・!」
イエスタディは直ぐ起き上がると、右腕を押さえながら走りだし路地裏に逃げ込む。
「・・・・・」
その様子を見たバイオレットは、一瞬銀色に煌めいた『何か』を宙に放るような動作の後、
地面を蹴り、空に跳んだ。
「はあ・・・はあ・・・!」
イエスタディは、壁にもたれかかりながらもなお歩く。
「先ずは、どこかに隠れないと・・・!」
バイオレットに勝てるわけが無い、それどころか逃げ切ることさえ不可能。
そう判断した彼女はどこか屋内へ隠れる道を選択した。
イエスタディが不意に、今自分がもたれかかっていたビルの壁に手を当てる。
すると、壁が砂になって崩れ落ち、丁度人一人通れる大きさの穴が開いた。
「ここなら、少しは安全かな・・・?」
イエスタディは誰ともなく呟く。
ふぅっ、と息を吐いて座りこむ。
が、次の瞬間、屋上の方からズン、と鈍重な音。
イエスタディが顔を上げた次の瞬間、もう一度ズン、と聞こえた。
ズン、ズン、とその音は少しずつ近づいてきて、彼女の心にある予感をよぎらせる。
はたして、その予感は当たっていた。
ぴし、とまるで刃物が岩石を切り裂く音が、紫色の淡い閃光と共に。
天井が切り裂かれ、独特の音を立てて落ちてきた崩れた石材と共に落ちてきて、その中から現れたのは。
黒い仮面を着けた、黒いコートの男・・・バイオレットだった。
イエスタディはすかさず、壁に穴を空けて逃げようとする。が。
「そうはいかないぜ?」
「!?」
ぐんっ、とイエスタディは見えない『何か』に引っ張られ、
バイオレットの目の前に。バイオレットは右手で彼女の首を掴んだ。
「ぐぅっ!」
そしてそのまま左手で空中の『何か』を掴み、今自分が降りてきた穴を通って一気に屋上へ。
「ここならお前の能力でも逃げられないだろ」
屋上の端。
イエスタディは首を掴まれ、足元は虚空。落ちればひとたまりも無いだろう。
「・・・どうして」
イエスタディが、言う。
「どうして・・・貴方は彼らに味方したんですか・・・!?」
「・・・・・」
バイオレットは、答えない。
「このまま『彼』の野望が成就してしまえば・・・
貴方のいた世界が消えてしまうんですよ・・・!?
いや、貴方の世界だけじゃない・・・。
この戦いに巻き込まれた人たちの世界まで・・・!
・・・お願いです、もう一度考え直してください・・・
『彼』を倒すためには、貴方の協力が必要なんです・・・!
その為にボクは、貴方をこの世界に招いた・・・!」
その瞬間、びゅおお、と一陣の風。
バイオレットのフードが、風にあおられ、外れ、
バイオレットの淡い紫色の髪が露わになる。
仮面には、紫色の六眼。
「・・・興味が無い」
「きゃああああっ!」
刹那、紫色の閃光が奔ると共に、イエスタディの絶叫。
「連れてくるなら、他の人間にするべきだったな」
そう言って、バイオレットは無情にも、右手を離した。
「そんな・・・どうしてですか・・・?・・・『籐堂紫苑』・・・」
目に涙を浮かべながら闇の中へ墜ちていくイエスタディを、
バイオレット・・・否、『籐堂紫苑』は仮面を外し、冷然と見下ろすばかりであった。