ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ツギハギセカイ〜合作小説〜 ( No.57 )
- 日時: 2011/01/25 22:04
- 名前: いち ◆ovUOluMwX2 (ID: PmZsycN0)
「ふぁ〜、おなかいっぱいです! 秋夜さん、ありがとうございます!」
謎の少女、イエスタディは食料円盤から出した尋常じゃない量の料理を、ものの数分で平らげた。
それにしても、こいつは一体何者なんだろうか?
彼女の横顔を見ていると、不意に目が合った。
「ん? 顔になんかついてます?」
首をかしげるイエスタディに、俺は「いや」と首を振った。
「けど、色々聞きたいことがある。質問してもいいか?」
「ん、あ、はい! なんなりと!!」
良かった、情報をつかめそうだ。
「まず、ここはどこなんだ?」
「知りません!!」
「…………」
いや、今なんなりとって言ったよな……?
「あ、ここはどういう原理で、どうなっているのかは分からないって意味ですよ? この世界の名前は、ツギハギセカイです」
イエスタディが俺の顔を見て慌てて情報を付け足した。
「その情報はもう知ってる。じゃあ、ここに俺を呼び寄せたやつについて教えてくれ」
ともかく、敵の情報が少しでも欲しい。それぐらいなら少しは……
「う〜ん、私も良くわからないんですよね〜」
…………
やっぱり、こいつ役立たずか?
「あ、ええと………あの男って呼ばれてます。能力、年齢、本当に男なのかどうか、全てが謎に包まれています。けど、1つ言えるのは世界を融合させ、歪みだらけのムチャクチャな世界を作るだけの力はあるということです」
イエスタディはまたも情報を付け足したが、正直そんな事はだいぶ前から予想はついていた。
けど、まだ聞きたい事はたくさんある。
俺は気を取り直して質問を続けた。
「じゃあ、君は何者なんだ?」
その質問に、イエスタディは一瞬顔を曇らせた。
が、すぐに笑って答えた。
「元、あの男の手下です」
「………君が?」
「ええ、それも、自分で言っちゃうのも何だけど、幹部です」
こんな、俺と同じぐらいの女の子が世界をゆがめるほどの組織の幹部…?
「そっか……」
「えへへ、そうですよね。私みたいなのが幹部って、驚きですよね…」
イエスタディは力なく笑った。
「いや……そうでもない」
「え?」
「見たことあるから……俺と同い年の子が、犯罪組織のトップだったのを、ね」
俺の脳裏に、一瞬苦い記憶がよみがえる。
「そう、ですか…………」
なんとなく、重い空気になってしまった。
しばらく、お互い無言のままで時間だけが過ぎた。
沈黙を破ったのは、俺だった。
「あのさ…」
「はい?」
「その傷……誰にやられたんだ?」
「………!!」
何気なく質問したつもりだったが、イエスタディは急にガタガタと震え始めた。
「ど、どうしたんだ…!?」
「あ、ああ………あああ…」
よほどショックを受けたんだろうか、完全に俺の声が届いてないようだ。
俺はイエスタディの体を揺すった。
「おい! おい!! 大丈夫か!?」
耳元で叫ぶと、ようやくイエスタディは落ち着きを取り戻した。
しかし、顔色はまだ悪い。
「バ、バイオレットに………」
「バイオレット?」
「恐ろしい男です…歳は秋夜さんと同じぐらい。でも、目はビックリするぐらい冷たい……」
「そいつが、君を気絶させて、ハンモックみたいなのに放置したのか?」
イエスタディはうなずいた。
なるほど、そのバイオレットとやらには、十分注意する必要があるな。
俺が考え込んでいると、イエスタディが何かを思い出したように「あ」とつぶやいた。
「どうした?」
「そうだ…秋夜さん。まだ近くにバイオレットがいるはず……!! 急いでどこかに—」
「残念だったな。もう見つかってるよ」
刹那、恐ろしいほど冷たく、美しい声が響いた。
「………バイオレット…!!」
イエスタディの顔色が変わる。
目の前にそびえ立つ摩天楼の、頂上にそいつはいた。
黒い仮面に、黒いコート。
フードの隙間から、紫色の髪の毛が見えた。
「よう、イエスタディ。と………遠野秋夜」
仮面の男が、少し笑ったように見えた。
コートから、徐々に紫色の光の糸のようなものが伸びている。
「あんたがバイオレットか」
滅華を構えながら、俺は感じた。
こいつは、やばい。
「そうだ………あと、お前を殺すように言われてるから、今から死んでもらう。というわけだから、よろしく」
言い終わるや否や、バイオレットは紫色の糸を広げ、一気に迫ってくる。
「イエスタディ、下がってろ!!」
俺はイエスタディを強引にビルの隙間に押し込むと、迫りくる紫色の閃光に、切っ先を向けた。
勝てるか、こいつに……!?