ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 心壊アラカルト ( No.67 )
- 日時: 2010/10/04 17:42
- 名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
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週の最初、月曜日。 その放課後に、
「 」
窓ガラスが思い切り割れた。
教室にに椅子が吹っ飛んできて、それが放課後で生徒の大半が教室に残っていなかったから、怪我人はいなかった。
怒鳴る、というより叫んでいる学年主任の女教師。
椅子を投げたのは、先日何者かに突き飛ばされ、頭部に怪我を負った琴羽せな。
そんな華奢な体のどこに椅子を投げ飛ばす力があったのか知らないが。
せなは自分を見ている生徒たちを睨みつけ、もう一度、教室の椅子の脚を持とうとした。
「はい、ストップ」
その手の上に手を重ね、人工的に感情のスイッチをオンにする。
せなが、僕を見た。
「なに?」 「なにじゃない。 帰るよ」 「殺してないし」
チラと廊下を見ると、腰を抜かしてるハゲた理科教師が口をパクパクさせている。 魚みたい。
「殺しちゃダメだろ」
「なんで。 こいつら邪魔だよ」
「とにかく、これ以上騒ぎになったら停学になる。 僕に会えなくなるよ」
自分で言ってて恥ずかしかったけど、せなは小さく 「わかった」 と言って、椅子の脚から手を離す。
膝下丈のスカートを翻し、教師たちを一瞥して、
「て、て、停学だぞ! 琴羽」
そういう彼らの声を無視して。
思い切り引いているクラスメイトからの視線さえ、どうでもいいと言う風に。
山城と目が合って、何か言おうと思ったけど、せなの歩行ペースが速いから、叶わなかった。
「なんであんな怒ってたの」
校門を出て、口を開く。
「あいつら、せなの腕掴んで連れて行こうとしたんだよ。 汚い、バカみたい。 大嫌い」
「なんでそんな嫌うわけ? あの人ら何かした?」
「そんなんじゃなくて、ユエが好きすぎて、他の人間が汚く見えるだけだよ」
僕、そんなキレイな顔してないと思うんだけど。
「ユエ、きゃーいーよっ」
「……どうも」
いやいや僕男なんですけど。
薄暗い、曇り空の下、せなはペケーッとした明るい笑顔で、
「せな、ユエを愛しすぎて、他の人いらないよ」
「いらないなら、殺しちゃう?」
「かもね」
あっさりと、僕以外の人間排除計画を予測するせな。
「てか、絶対そうだよ。 ユエしかいらないよ」
あらら、確定になっちゃった。
やったー僕は安全地帯だぁ。
「僕はせなが嫌いなんだよ」 大切だけど。
「……それでも、せなはユエ好きだよ」 知ってるけど。
好きだと、何回言われたことだろう。
中学時代から、それは変わらない。 いつもいつも、この子は僕の体を傷つけては、楽しそうに。
──ユエのこの傷、せながつけたんだよね。
そんなに僕が恋しいなら、殺してくれてもよかったのに。