ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 絶対少女!! ─巡る季節─ ( No.8 )
- 日時: 2010/09/25 17:35
- 名前: ユエ (ID: sH2xenM.)
■ 壱 ■
むかし、むかし。
あたしの家は巫女さんの家系だったんだ。
……なんて、そんなことはどうでもいい。
それより今は、“自分が存在できる時間”を確保しなくてはならないのだ。
「………、げほっ……!」
あたしの手のひらが少し、ほんの少しだけ紅く染まった。
20XX年 9月19日 雨宮家所有、蛍島 快晴
地図で見たら、本当に小さい島である。
でも、本当はけっこう大きな島。 名前は蛍島。
夏の夜になると、たくさんの蛍が出るから、蛍島というらしい。
「───あははは! 逃げても無駄ぁ!」
砂浜で、鬼ごっこをしている少年少女たちがいた。
見た目、高校生や中学生である。
「“浮遊”!」
中学生くらいの少年が、両手を前に出して叫んだ。
細い腕や脚をしているから、女の子に見えないことも無い。
だが、彼は中学二年生の男子だ。
「ッあぁ! この、能力使いやがってぇ!」
少年の前にいた少女が、突然浮いた。
ふわり、と。 それから空中で暴れるが、浮いたままだ。
「お前のこと、燃やしてやるッ! 藤堂、空ぁ!」
藤堂空、と呼ばれた先ほどの少年はニヤ、と笑った。
この浮いて、空のことを睨みつけるのは雨宮マリア。
空と同じく中学二年生で、蛍島の住人。 名家である雨宮家の令嬢である。
「燃やしてみやがれ!」
空がマリアにタッチしようとした瞬間。
「───駄目ですよ、空くん?」
空の背後に、高校一年生の一ノ瀬ふたばが現れた。
突然、音もなく、空の背後に。
「いッ?! 一ノ瀬、せんぱ……っ?!」
「一ノ瀬先輩! 空をボコボコにして下さい!」
ふたばの、肩までの黒い髪が風になびく。
それからふたばは、マリアに向かって微笑んだ。
「大丈夫ですよ、マリアちゃん。
───お姉ちゃんがいますからね」
「ふん、ザマーミロ空! 奏先輩にやられちゃえ!」
奏先輩、というのは空の姉のことである。
高校一年生で、鬼ごっこ参加中。