ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ─オーバーゲーム─14話UP♪ ( No.115 )
日時: 2010/10/23 17:02
名前: 鷹の目 (ID: U3CBWc3a)

【15】

A棟 ‘毒の間’  5階


ついにゴール地点である1−2の教室を目前とした所で、7人は足を止めた。
SECOND STAGE最後の試練ともいえる、硫酸の道が立ちはだかっていた。

「無理だ。4階に下りて、違う階段から向こうに行けば・・・・。」

「それも無理だ。確認はしていないが、恐らく全ての廊下が硫酸の道になっている。」

「で、でも、こんな道を進めるわけがない・・・」

宮本の言葉に、全員が同感だった。
志村は辺りを見渡して進めるスペースがないか確認するが、全てが硫酸を被って、触れる場所もない。
7人が唖然となっていたその時だった。


『制限時間が20分を切りました。』


「なっ!?」


全員は放送を聞いて愕然とした。
最早、他の道を探す暇などない。目の前の硫酸で浸った道を進むしか、クリアの方法はないのだ。

「どうするのデスか?」

「知らねえよ・・・。」

「これはまずいな。」


「・・・・よし。馬鹿の考える方法だが、これしかないだろ。」


志村はそう言うと、7人の後ろにあった1ー6組の教室を見た。
すると、木製のドアを外し、全部で4つのドアを床に置いた。


「このドアの上に2人乗って、硫酸の上から滑るように向こうまで渡るぞ。」


「は?馬鹿ですか?そんなこと無理に決まってるでしょ。」


この中で成績上位者である当真は、鼻で笑って呆れて果てた。
当真より頭の良い京介も一瞬は呆れたが、その方法以外信じるものはなかった。

「おっしゃ!!俺とアルジーが先に行くぜ。」

「YES!!分かりマシタ!!!」

志村は頷くと、洋一郎とアルジーは寝かせたドアの上に乗り込んだ。
2人が乗っただけでちょうどよく、ドアを廊下に向ける。
洋一郎とアルジーは肩を組み、バランスを崩さないように支え合う。

「俺と三谷、藍田で押すぞ!!」

「分かりました!!」

「・・・しょうがないな。」

3人はドアの淵を掴むと、目を合わせて合図を取り合う。
そして、大声をあげてドアを押した。


「行けぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!」



「う、うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」



洋一郎とアルジーを乗せたドアは、硫酸の上を滑りながら進んで行く。
2人は互いにバランスを支え合い、そのまま突き進んでいく。
そして、ゴール地点である1−2の教室前に着くと、硫酸の道はなくなった。

「行けた・・・はははっ・・・やった・・・・」

「やりまシタね!!」

2人はドアから降りると、抱き合って喜びあった。
一方、2人が無事に着いたのを確認した志村は、次に宮本と当真をドアの上に乗せた。

「2人でバランスを支え合ってください!!」

「分かりました・・・」

「宮本先生、頼みますよ。」

当真は宮本と肩を組み、残っている志村と京介と玲奈でドアを押した。
すると、ドアは先ほどと同じように、硫酸の上を滑らかに滑っていく。

「バランスを支えあえ!!」

志村が宮本と当真に叫び、2人は必死にバランスを支え合う。
そして、1−2の教室付近まで来たところで、滑っていたドアは勝手に止まった。

志村は残った京介と玲奈を見ると、急いでドアに乗せようとする。
だが、京介と玲奈は、悲しそうな目で志村を見ていた。

「なんだ?」

「せ、先生はどうするんですか?俺たちが行ったら、先生はどうやって・・・・」

「気にするな。生徒を守る、助けるのが先生の役目だ。」

志村は強引に2人をドアの上に乗せ、両手でドアの淵を掴む。
京介と玲奈は急いで肩を組み、バランスを崩さないように体勢を整えた。


「先生・・・・ちょっと待って下さい・・・・」



「制限時間はもうないんだ。じゃあな。」



志村はそう言うと、京介と玲奈を乗せたドアを勢い良く押した。