ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ─オーバーゲーム─ ( No.156 )
日時: 2010/11/01 20:52
名前: 鷹の目 (ID: U3CBWc3a)

【02】  〜洋一郎の過去〜


5年前  2003年 冬______


洋一郎や京介が、中学1年生になったばかりの時だった。
洋一郎は、父である洋司、母である可奈子の3人で、ある場所に向かっていた。
それは、祖父母の家である。
毎年、正月は祖父母の家で過ごすことになっているのだ。

「親父、まだ着かねえなら俺寝るから。」

「はいはい、着いたら起こすわよ。」

可奈子は笑顔で言い、洋司は2人のやり取りに微笑んだ。
洋一郎は目を閉じ、後部座席に寝転がって眠り始める。
だが、次に洋一郎が目を覚ました時には、2人の姿は消えていた。


─────────


ガッシャアーーーーーーン!!!!!!!!!!


突然の轟音、洋一郎は飛び起きたが、その瞬間に方向を失った。

「う、うわぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

洋一郎は悲鳴を上げながら、後部座席のドアが開いたことが分かった。
何かの拍子で開いたらしく、洋一郎はそのままドアから外へ放り出された。

「うっ・・・ぐっ・・・・・・」

洋一郎はそのまま地面に叩きつけられ、朦朧とした意識の中、空中に舞う‘何か’に目を奪われた。


それは、洋一郎が乗っていた車だった。


「お袋・・・・親父・・・・・」


大型のバンは、そのまま空中で回転しながら、道路の脇にある森林に落ちて行った。
その瞬間、辺り周辺に爆音が鳴り響き、洋一郎は愕然としてしまった。

「嘘・・・だ・・・・嘘だ・・・・・・」


「君!!!大丈夫か!!!!」


洋一郎はそのまま意識が途切れ、目の前が暗闇になった。


───────


「うっ・・・・ここは・・・・・・」


洋一郎が目を覚ました時には、病院のベットの上だった。
頭には包帯が巻かれ、右足は天井から吊るされ、左手は固定されてある。

「起きたか・・・。大丈夫か?」

「・・・・誰だ?」

洋一郎の目の前に、銀髪にスーツを着た謎の男性が現れた。
男性は洋一郎に近づくと、静かに口を開いた。


「君の両親は亡くなられた。残念だよ。」


男性の言葉を聞いた瞬間、洋一郎の脳裏に、爆音と車が宙で回転する映像が浮かんだ。
そして、洋一郎の目から大量の涙が溢れだした。
男性は洋一郎の頭を撫でると、一言だけ呟いた。


「強く生きろ。他人を利用し、力だけで支配するんだ。」


男性はそう言うと、病室から出て行こうとした。
だが、洋一郎は涙を拭きながら呼び止める。

「待ってよ・・・あなたの名前は?」


「私の名前は、月城遊冶。さようなら。」


月城はそう言うと、病室を出て行った。


─────────


現在


「答えは?」


アースに急がされ、洋一郎は重い口を開こうとする。
だが、再び蘇った記憶に迷っていた。

「俺の両親は・・・・」

洋一郎は涙を堪え、拳を強く握り締めた。
その場にいた全員は静かになり、ただ洋一郎が答えるのを待つ。

「・・・・らねぇ・・・・・」

「ん?」

洋一郎が小声で何かを呟いた。
アースは洋一郎に近づき、首を傾げた。



「答えは・・・・知らねえ・・・・・」



「不正解です。1ポイント下がります。これで黒部洋一郎のポイントは残り1ポイントです。」



洋一郎は唇を噛み締め、自身の弱さを感じた。
何度も拳を握りしめ、涙を堪え、頭を何度も振る。
だが、THIRD STAGEは終わらない。



そして、解答権はアルジーへと移るのだった。