ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ─オーバーゲーム─ ( No.44 )
日時: 2010/10/02 17:39
名前: 鷹の目 (ID: U3CBWc3a)

【16】

C棟 3−1


京介、志村は玲奈と宗一郎に近づき、口を封じたガムテープを剥ぎ取った。
ガムテープを剥がすと、2人は息を荒げながら安堵の息を漏らす。
だが、そんな悠長な場合ではなかった。

「どうすればいいんだ?」

「爆弾から延びているコードが、玲奈と宗一郎の足にガムテープと一緒についてる。」

「・・・・2人を助けるのは無理らしいな・・・」

ムーンの言葉が正しければ、2人を助けた瞬間に爆弾は爆発。
と言って、このまま悩んでいれば爆弾は爆発。
この場合は、1人だけでも助けるのが一番良い選択だ。

「玲奈・・・宗一郎・・・・・」




「玲奈を助けろ!!!俺はいい・・・・」




宗一郎は突然怒鳴り、京介の方を見る。
京介は一瞬動きが止まったが、大きく深呼吸をして、いきなり頭を下げた。

「資料室ではごめん。玲奈と宗一郎を助けたくて、あんな喧嘩を起こしたんだ。」

「・・・・分かってるよ。俺もごめん。」

宗一郎は微笑み、京介もつられて笑ってしまった。
この瞬間だけ、2人は爆弾の存在を忘れてしまった。
だが、現実はすぐに戻ってきたのだった。

「おい、三谷。時間が3分を切ったぞ・・・」

志村の言葉で、京介は設置された爆弾を見る。
爆弾のタイマーは、すでに3分を過ぎていた。

「京介、玲奈を連れてクリアしろ。俺はここに残る。」

「置いて行けるか。お前もつれて行く。」


「無理だ!!2人とも助ければ、教室を出る前に爆弾は・・・・・」


宗一郎は途中で叫ぶのを止め、京介の方を涙目で見る。
すると、後ろにいた志村は玲奈の手足を縛ったガムテープを剥がし始める。

「2分を切った。山本を助けて、君を置いて行くよ。」

「そうしてください・・・。京介、頼む。」

志村がガムテープを外し終ると、玲奈は立ち上がって京介に抱きつく。
玲奈は大声で泣こうとしたが、頑張って泣くのを堪えた。
京介も涙目になり、宗一郎をずっと見つめる。



「お前らとは、もっと違う出会い方をしたかった。ゲームをクリアしてくれ。」



「・・・・宗一郎、ごめんな・・・・・」



京介はそう言うと、玲奈を引き連れ、志村と3人で教室を出て行った。




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教室に一人残された宗一郎は、隣に置かれた爆弾を見る。
タイマーは、もう1分を切っていた。
手足を縛られているせいで、目から溢れ出てくる涙を拭くことはできない。

「父さん・・・母さん・・・・」

宗一郎は自身の人生を振り返り始めた。
平凡な毎日を送り、高校に入って友達も出来ずに困っていた。
そんな中、このオーバーゲームは始まり、京介と玲奈の勇気ある行動を見て、声をかけた。

そして、親友と慣れたのだ。

京介と玲奈は、宗一郎にとって人生の光であり、唯一の仲間といえる存在だった。


「京介、玲奈。お前らなら、ゲームをクリアできる。」


宗一郎は天井を見上げ、静かに目を閉じた。



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