ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ─オーバーゲーム─FIRST STAGE ( No.6 )
日時: 2010/09/20 16:46
名前: 鷹の目 (ID: U3CBWc3a)

【01】

ゲームの始まりと共に、全生徒と職員は我を忘れて校舎内を駆け廻っていた。
そんな中、冷静に動いている者も数名存在していた。

「玲奈!!こっちだ!!」

生徒でごった返す渡り廊下を抜け、京介は玲奈の手を引っ張り、2階の第1理科室に飛び込んだ。
内側からカギを閉めると、安堵の息を漏らす。

「み、みんな一体・・・・・」

「大方、ゲームオーバーが死ぬって自然に理解してんだよ。とりあえず、そのビー玉を探さないと。」

「でも、こんな大きな校舎に100個のビー玉隠すところなんて無限にあるよ。どうする?」

玲奈の言葉に、京介は大きなため息をつく。
この学園は「三」という漢字と同じ形の構造だ。
5階建ての3棟あり、A棟1年、B棟2年、C棟3年と分かれている。
そして、現在2人がいる場所は3年生のC棟。

「この理科室から探すぞ。」

京介は辺りを見渡し、化学薬品がビーカーに入った棚のガラス扉を開ける。
すると、薬品独特な匂いが鼻を攻撃してきた。

「ぐっ・・・臭いな・・・・・」

ビーカーの後ろや中を見てみるが、無論ビー玉はどこにもなかった。

「京介、これなんだろう?」

「ん?」

部屋の一番前で、玲奈が教卓の上に置かれた一枚の紙を見ていた。
京介も教卓へ駆け寄り、その紙を覗きこむ。


“NOLIBEN  解けし者、宝へ誘われる”


「の、のりべん?」

京介は紙を見て首を傾げた。
のり弁と言えば、あののり弁。

「のり弁が宝への道か?」

「違うよ。これは、原子記号。」

玲奈はそう言うと、胸ポケットからペンを取り出して何かを書き始めた。

「Nは窒素、Oは炭素、LIはリチウム、BEはベリリウム、でもNが2つある。」

「窒素?あっ、そう言えば・・・・」

京介は振り向き、液体の化学薬品がある棚とは違う棚へと向かった。
無数にある瓶の一つに、‘N’と書かれたテープが張られた瓶があった。
しかし、ビー玉はどこにもない。

「ないぞ?」

「よく調べて。何かあるはず。」

玲奈の言葉に後押しされ、京介はガラス扉を開けて瓶を持ちあげた。
すると、瓶の下に小さな窪みがあった。
その中に指を入れると、そこには赤色と青色で色づけされた綺麗なビー玉。

「やった!!あったぞ!!!」

京介は歓喜を上げながら、玲奈の方を振り向く。
すると、玲奈も笑顔でガッツポーズを見せた。

「だけど、1つ探し出すのにここまでとは・・・。」

「ほかの場所も簡単には見つからないな・・・」

京介は弱音を吐いたが、自分の弱さを見直して首を横に振る。

「あと一つ見つけるぞ!!」

「うん!!!」

京介の言葉に、玲奈も頷く。
2人が廊下に出ると、いつの間にかほとんどの生徒がどこかへと消え去っていた。

「他のみんな、大丈夫かな?」

「600人のうち500人が死ぬんだ。自分のことだけ考えていよう。」

「うん・・・・・」

京介はそう言うと、玲奈と共に再びビー玉を探し始めた。