ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ─オーバーゲーム FIRST STAGE─2話UP ( No.8 )
日時: 2010/09/21 22:51
名前: 鷹の目 (ID: U3CBWc3a)

【03】

B棟 2−1


「瑠夏、ビー玉はまだなの?」

「い、今探しております・・・・・」

金髪にカールの見た目からお金持ちという雰囲気を出している木上院明日香。
明日香の前には、眼鏡をかけ影が薄そうな朝場瑠夏が、2−1の教室を隅から隅まで探索中だった。
必死に探している瑠夏に対して、明日香はあくびをしながら教室を見渡す。

「だけど、この鉄板はどうにかならないのかしら・・・・」

「さ、触らない方がいいのでは・・・・」

「何?私に命令しているの?」

「い、いえ・・・・」

瑠夏はぺこぺこと頭を下げ、掃除箱に手をかけた。
中には箒、バケツや雑巾、塵取りしかない。
瑠夏はため息をつき、ふと掃除箱の上を見る。
すると、セロテープで貼りつけられたビー玉が運良く見つかった。

「あっ・・・」

瑠夏はビー玉を見つけると、明日香に気付かれない様にポケットの中へすぐに隠す。
瑠夏は深呼吸をして、明日香の方を振り向く。

「あった?」

「いえ、御座いません。もう少し探してみます。」

「そう、私は寝るから。教室の鍵を全て閉めて密室にしなさい。」

明日香はそう言うと、椅子に座って机に俯いて寝始める。
瑠夏はポケットにあるビー玉の感触を確かめ、不気味に微笑んだ。

「私は勝ちますよ。明日香様・・・・」


──────


一方 C棟


すでに理科室でビー玉を見つけた京介と玲奈は、もう1つ見つけるために廊下を歩いていた。
どの教室を見ても、生徒たちが懸命に探している。
どうやら、ビー玉を見つけている者は少ないらしい。

「結構、隠し場所難しいんだね。」

「そうだな。で、これからどこ行く?」

「え〜っと・・・・、放送室とかは?」

玲奈の言葉に、京介は眉をピクリと動かした。
放送室は、C棟の1階奥にある。
意外な場所だし、恐らく1階には人は少ないだろう。

「行ってみよう。」

京介は玲奈と顔を合わせると、1階へと向かって階段を降りた。
だが、そこに待ち受けていたのは悲惨な光景であった。


─1階─


「ここからは、生徒の通行は一切だめだ!!!」

2人が1階に下りると、そこにはデスクやパイプ椅子が無造作に重ねられたバリケードが待っていた。
2人は、バリケードの前で呆然としている数人の生徒を見ながら、バリケードの前に来る。

「お前らも、ここには近づくな!!!」

先ほどから怒鳴っているのは、学園の教頭である馬場道夫であった。
白髪交じりの髪に、怖い顔つきで怒鳴る馬場に対し、生徒たちは怒りや悔しさを表情に表している。

「なんで行けないんですか?」

「1階は大人が探す。君たちは、2階から5階を探してたまえ。」

馬場は皮肉たっぷりに言うと、むかつく笑い声を廊下に響かせる。
これに痺れを切らした京介は、怒りでバリケードのデスクに蹴りを入れた。
その時だった。

「なっ!わぁぁぁぁ!!!!!」

無造作に作られたバリケードは、一発の蹴りでバランスを崩し、馬場に襲いかかる。
轟音を上げて、パイプ椅子やデスクは馬場の上へと落ちた。


「ざまぁみろっ!!クソ教頭!!!」


京介はその言葉を吐きだすと、足早に2階へと戻っていく。
玲奈は慌てて追いかけ、京介の隣を歩く。

「意地でも上の階を探すんだ。」

「あの教頭をギャフンと言わせる。」



「お、俺も仲間に入れてくれ!!!!!」



2人が階段を上っていると、後ろから男子生徒が駆け寄ってきた。
先ほど、バリケードの前にいた数人の内の誰かのようだった。
男子生徒は息を整えると、2人の顔を見る。

「1−5組の鞍馬宗一郎。頼む、君たちの仲間に入れてくれ!!」

「な、仲間って・・・・」

短髪の運動神経が良さそうな宗一郎は、頭を下げて京介に願う。
京介は玲奈と顔を合わせると、一回間をおいて頷く。


「別にいいよ。俺は三谷京介、よろしく。」

「私は山本玲奈。よろしくね。」

「は、はい!!!」


宗一郎は笑顔で2人を見ると、安堵の息を漏らしたのだった。
そして、3人はそのまま上の階へと目指したのだった。