ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: BLACK PARADE ( No.1 )
日時: 2010/09/24 04:30
名前: くろ (ID: PJWa8O3u)


BLACK PARADE


パンッ!!


銃声が響き渡る路地裏。
ゴミ箱を漁っていた野良猫が、驚いた様に顔を上げ
そのまま逃げ出していった。


「あッッぶね!!」

ザッ…!

ソールは剥き出しの肩を、硬いコンクリートの地面に引き摺った。
おかげで銃弾から逃れることはできたが、
灰色のコンクリートに赤い線が走る。

「…ちっくしょ…」

ソールは一旦崩れかけた壁の後ろに隠れ
擦れたジーンズのポケットを弄った。


現在午前2時37分
今夜は大きな満月が、闇夜を照らしてる。

ソールはもう予備の銃弾が無い事に気付き
小さく舌打ちをすると、ゆっくり壁の影から出てきた。

満月を背に立つソールに、
追いかけてきた男達は思わず魅入ってしまった。
あまりにも美しい、のだ。
ソールの白い肌とブロンドの髪は神々しく月明かりに照らされ
グリーンの瞳が夜に揺らめいている。
なんて美しいのだろう。

思わず男達は銃を構えていた姿勢を崩してしまった。

ソールはその隙を見逃さず、
強く地面を蹴って飛んだ。
男達の頭上を飛び越え、反対側に着地する。
そのまま弾切れの銃の銃口を持ち、一番手前に居た男の頭を持ち手でガツン、と殴った。

ズサリ、と男は力なく地面に倒れる。


「…まだまだこっからだぞ…」


まるで豹だ。
その美しい姿からは想像の付かないような
秘めた力と凶暴性を持っている。
残りの3人の男達の額から、嫌な汗が流れた。


第1話 パンテラス


"日本と呼ばれて居た"国
—東京区


其処は少し寂れたものの、以前と変わらない喧騒に包まれている。
変わったのはその喧騒に、銃声や悲鳴が混じったところ。

ソールは擦り剥けた肩をそのままに、東京の路地裏を歩いていた。

日の昇りきった10時23分

照りつける日差しと裏腹に、気温はかなり低い。
すれ違う人はみな厚手のコートを羽織って
足早に通り過ぎる。

世界地図から日本が消えて数十年
人々は何一つ変わらないまま、生活を続けていた。


ソールは大きな屋敷の門の前に立つと、深呼吸をした後、通り過ぎ、少し行った壁で再び止まり
壁に手をかけてよじ登った。

—見つかりませんように…

壁の内側のやわらかい芝生に着地すると同時に
ピピピピーッと甲高い音が響く。

「また夜遊びしてきたのかい?」

「…関係ねぇだろ、おっさん」

「…どんなに憎まれ口をたたいても、必ずこの屋敷に帰ってくるなんて、可愛いものだね」

ソールは車椅子で音も無くやってきた男をにらみつける。
男は不敵に笑った。

「お帰り、ソール・パンテラス(豹)。」


ここは地獄だ。
ソールは導かれるようにして車椅子の男の後ろ付いていった。

ここは地獄で逃れられないのは運命—




「すぐに怪我の手当てと、体温、心音の測定だ」

男は屋敷に入るなり冷たく言い放った。
玄関ホールの奥から白衣を来た男女が現れると
ソールは静かに彼らの後を付いて行った。


「まったく…毎回怪我をして帰ってくるなんて…」


—お前は大切な実験体モルモットだと言うのに—

車椅子の男—桜井は、再び怪しく笑った。








End

Next


※パンテラスとはラテン語でヒョウの学名を指します