ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: BLACK PARADE ( No.2 )
日時: 2010/09/27 10:25
名前: くろ (ID: PJWa8O3u)

BLACK PARADE



物心ついたときから、俺はこの白く大きな塀に囲まれていた。
ソールと言う名前もこの男につけられた。
ラテン語で「太陽」と言う意味だそうだ。
そんな俺は自分の本当の名前はおろか、どこの出身か、何人か、いつどこで生まれたのかさえもわからない。

頭の中が詰まっていく気がして、そこで考えるのもやめた。


医療用のベッドの上に横たわって数分
桜井の助手である男女が、せわしなく回りを行き来している。
横にある点滴は、ソールの右腕につながっている。
この屋敷に来てから毎日(と言っても帰って来ない日もあるが)打たれている点滴だ。
無色透明の液体が血液に溶けていく度、
自分さえもこの液体と同化していく気がしてならない。


第2話 "ただの子供"



「また逃した?」

寂れたビル、かつて警察庁だった其処。
政治経済は破綻したものの、治安の悪化して行く街のために
政府は僅かな人材を酷使し、街のパトロールや、暴動などを防いでいた。

村雨—彼がその警察団の長である。

「あのなあ…子供相手に何やってんだよ…」

村雨は端整な顔をゆがませながら、黒髪を掻いた。

そう、ただの子供だ。
"ただの子供"がこの東京区一番の犯罪者になったのは何時からだろう。もう覚えていない。

「…ソール(太陽)・パンテラス(豹)」

初めてソールと出会ったのは数年前だ。
とあるアパート住人の通報で、駆けつけると
部屋の中は血の海、その真ん中で死体とともに佇む美しい顔の少年—ソールが居た。
当時の推定年齢15歳、彼は5人も殺していた。


「…ああ…頭が痛い」

「団長、そんな悩んでるとハゲますよ」

「…うるさい、さっさと警備に戻れ」

彼はその後、こちらが唖然としているうちに逃げ今日に至る。

ソールは今も時々人を殺している。
殺人衝動が発作的に起こるのか否かは分からないが
危険因子であるのは確かだ。


「…ソール、」




End

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