ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: エンゼルフォール ( No.1 )
- 日時: 2010/12/12 14:16
- 名前: 遮犬 (ID: XvkJzdpR)
『——聞こえる?』
……誰だ?
『——僕だよ、僕』
姿が見えない。どこにいるんだ?
『——そうか……君は、僕のことさえも忘れてしまったんだね』
何をいってるんだ? 君のことを忘れた……?
『——でも、このさいもういいさ。時間がないんだ』
どういう意味だ? ここはどこなんだ?
『——君は、本当にそこにいるの?』
僕が質問しているんだけどな……。こうやって話しているからいるんじゃないのか?
『——なんでそこにいるの?』
……ますますわからないな。僕には君がどうして僕と話しているかさえわからないというのに
『——君は、生きているの?』
……生きている? ……そうじゃないのか? 僕は……死んでるのか? わからない……
『——どうしてわからない?』
目覚めたらここにいたんだ……。わかるはずがないだろ?
『——記憶は?』
記憶……? ……そうだ、僕は……——誰"だった"?
『——君は……——だよ』
……なんていったんだ? 変なノイズに阻まれてよく聞こえない……。
『——あぁ、やっぱり君は僕のことを忘れてしまってるんだね……。声が届かないのはそのせいなんだ』
何も……思い出せない。僕は……?
『——君は、死んだんだ』
……僕は……死んでる?
『——そう、君は死んだ。でも、生きてる』
……わけがわからない。僕は死んでるのか? 生きてるのか?
『——生かされてるといったほうがいいのかもしれない』
生かされてる……? 誰にだ?
『——ごめんね、もう時間だ…』
ちょっと待ってくれ! 待っ——!
『——きっと……君は僕を思い出してくれるよね……』
あっ——!
「うわあああっ!!」
大きな音を立てている目覚まし時計と、ベッドから落ちた衝撃により、少年は目覚めた。
「夢……? でも……」
変な感覚がする。頭が遠のいていく感じや手足が痺れていた様な感覚。
どうやら少年がいるのは建物の中でも上の方に位置するようだった。
それは何故か開きっぱなしの扉の奥に見えたのが階段だったために分かることだった。
「……ここ、どこだ……? ——ッ!」
急に頭が痛くなってきた。ひどい頭痛が少年を襲う。視界も少しボヤけている。
周りを見ると質素なベッドに目覚まし時計ぐらいしか置いていなかった。
殺風景な真っ白い部屋。少年は見に覚えのない部屋を出て、階段を下りる。
「ここはどこなんだ……?」
頭を抱えながら、手元にある手すりをもう片方の手で持ち、ゆっくりと下りて行く。
まだ階段はあったのだが、だんだん見えてきた白い大きな扉が何より気になり、目の前で立ち止まる。
「……なんだ……? これ……」
呆然と白い扉を見つめた後、開けることを決心した。
何一つ思い出せない少年は少しの期待をかけて白い大きな扉をゆっくりと開けた。
その中から漏れて来たのは、白く輝く暖かい光。
「眩しい……」
目を腕で少し隠しながら一歩歩んだ——が、足が床に着く感じがなく、まさに空間だった。
「……え?」
下はすごい量の水が滝のように流れており、一番最下層のほうは白で包まれており、全く見えない
「ッ——」
何の抵抗もするヒマもなく、少年はその白で包まれている何メートルも下の滝へと
真っ逆さまに落ちていった。
『——きっと君なら……僕を……
見つけ出してくれるよね…?』
心のどこかで、誰かがそう呟いたような気がした。