ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: エンゼルフォール オリキャラ少々募集 ( No.48 )
日時: 2010/10/24 15:21
名前: 遮犬 (ID: cLZL9WsW)

(どうして…? どうして…!?)

秋風が吹き、季節が秋なのだと感じさせるような落ち葉や紅葉がその並木の道を彩っていた。

そこはいつも近所の方たちの人気マラソンコースにもなっており、人一人はいるはずである。

だが、今日に限っては誰もいない。ただただ、秋風が冷たく、その道を走り抜ける少女へと吹くのみ。

(私は…! 私は…!!)

少女は、今日の朝方に起きた事をずっと思い返していた。

その少女、遥は陽嗚の家での出来事にかなり困惑していた。

そしてまた、自分の考えたくはない真実が浮かび上がってきたのであった。

(そんなの…そんなのって…!!)

知ってしまった。知りたくはなかった。息を切らしながら立ち止まる。

「私は…?」

自分の手を見つめながら少女は自分自身へと問いかけた。それが何を意味するわけでもなく。

ただ、そうしないといけない気がした。

「…あの…光は…」

そして、少女が上空で見たものは


白い、暖かいとは違う、なんだか寒気のする光だった。


「あれは…一体?」

遥は呆然とその光を見つめる。その遠くに見える光の下には

「…誰…ですか?」

黒い、コートを身に付け、黒いマフラーをつけた銀髪赤眼の男がいた。

いつの間にそこにいたのか。遥には全くわからなかった。

何を言えば良いのか戸惑っていると、

「…探したぞ」

「…え?」

時が止まったような気がした。





「ついに始まりよったか…」

既に廃れているビルの屋上に佇むは、二つの人影。

「せめて、東方のは始末しておきたかったがな…」

その男女のペアの内の男が呟いた。白い光を遠く見つめながら。

「ちっ…レイヴンのドアホが邪魔せんかったらなぁ…」

「相手は"最強の堕天使"だ。今の俺達では敵う相手ではない」

「わかってるよっ! ったく…」

大阪弁風の喋り方をする女性、炬鳥は淡々と喋る自分の相棒ともいえる男、龍尾に対して素っ気無くする。

龍尾はこの対応には慣れているのか、何も言わずにただただ、目の前の絶えることのない白い光を見つめる

「…エンゼルフォールからの召喚魔陣による、天使の大量降臨…」

龍尾は自身の体にかけられている大きな背丈を越えるほどの槍を手で構える。

目の前より、向かってきたのは、無数の天使。

「"魔天使の人形"ごとき…!」炬鳥はその天使たちを睨みつける。

炬鳥たちは天使、約20名ほどに囲まれた。

そんな状況であろうにも関わらず、表情が強張るどころか、むしろ、笑った。


「さぁ…とりあえず、第一の関門。

     生き残ろうか」





陽嗚と旋風はその頃、ようやく広いセメントで作られた地面へと降りた。

いまだ、威風堂々と旋風は凛々しい顔をしていた。

「一体、何なんだ…? そろそろ説明してくれないか?」

陽嗚が普通とは違い、受け答えをあまりしてくれない"こっちの旋風"に少々戸惑っていた。

何せ、人格が全くの別人なのである。いわゆる、多重人格というやつなのだろうか。

どちらが本当の旋風かも分からないが今は状況を説明してほしいと切に願った。

「…世界の本当の姿を知る時がきたの」

目線を陽嗚に向けようともせず、ただ呟いた。

「それの意味がわからないんだ。世界の本当の姿って…」

「じきに分かる」

ただただ、必要最低限のことだけを話しているようで気味が悪かった。

「君は本当に——」

その時、周りに何かが近づいてくる奇妙な気配を感じた。

「…きたようだ。…魔天使の人形が」

「魔天使の…人形?」聞きなれない言葉を繰り返しながらも周りに注意する。

"人格の違う旋風"はこれに関しては説明をしてくれた。

「魔天使というのは、天使の力、いわゆる異端の力を使うことの出来る強力な天使のことだ」

「天使にもそんな天使が…?」一気に気配が高まる。そして、それはすぐさま陽嗚たちの元に現れた。

「…すなわち、その人形。つまり魔天使によって創り出された存在、それが…魔天使の人形だ」

ケラケラと笑いながら現れたのは、昨日見た天使と全く同じような天使だった。

畏怖…それを十分感じさせられるような"モノ"。人ではない。それは雰囲気だけで分かる。

それらが今、何十体と自分達に迫りきていた。ケラケラと不気味な笑いを放ちながら。

「…記憶を食われた者はただ消滅するだけじゃない。一つの存在として放置される」

「一つの…存在?」

「つまり、肉体だけが残る。その肉体は何に使っている思う? マスター」

マスターという言い方に、少し違和感を感じた。さらに、その答えがとても残酷なものだとわかってしまう

「もしかして…」

「それらの肉体は、この人を喰らうだけの天使のために使われる。いわばコイツラは元々…

 存在し、人間として生きていた者だということだ」

「そんな…」

何をやっても、必ず犠牲者が出る。

こうして、自分達を囲んでいる人ではないモノは元々人間だというのだ。

陽嗚はひどく、胸に苦しみを覚えた。

元々人であった人を、人でないと、化け物だと、畏怖たるモノだと思ってしまう自分が

自分自身が、一番怖かった。


「マスター…下がっていろ」

旋風はそう呟いて走り出す。

「まっ——!」陽嗚は止めようと声を出そうとするが


止めてどうするというのか。この畏怖するべきモノたちは、自分たちを喰らおうとしている。

倒さなくてはならない。そうは分かっていても、何かが重くのしかかる。

旋風は目の前にかかってくる畏怖するべきモノへと目にも止まらぬ速度で吹き飛ばしていく。


畏怖するべきモノの首がもげ、足が折れた音がし、腕が曲がってはならない方向へと曲がり

内臓が破裂する音がし、血を噴出する音。

「もう…!」

畏怖するべきモノの数はあっという間に消滅していき、最後の1体となったとき。

「もう! やめてくれっ!!」

そんな陽嗚の声もむなしく、旋風は最後の一体を振り落とし、頭蓋骨を足で粉砕した。

「何故止める? 殺らねば、殺られるのだぞ?」

旋風は無表情で、冷たい目で陽嗚を見据える。

「なんで…! なんでっ!」

陽嗚はただ、そこでうずくまり、そして


「うわあああああああああああああ!!」


叫ぶことしか、出来なかった。