ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

第一話 「私はココロが読めます。」 ( No.10 )
日時: 2010/10/13 21:28
名前: リコ☆ (ID: rD6rLP90)

*02 ありえない事件<できごと>

 次の日。
 げた箱を見ると、当たり前のように上履きが消えていた。
 そして代わりに入っていたのは、生ゴミ。

(これくらいなら、まだマシ——だよね)
 
 私は、職員室で貸してもらったスリッパをはきながら教室に向かった。

 ガラッと教室を開けると、にぎやかだった教室がいっきに静かになった。
 ひそひそ声が小さく聞こえる。

「あぁ、杠さん。おはよう」

 嫌みったらしい顔で近づいてくる倉山さん。

<<やっと来たわね>>

「おはよう。倉山さん」

 ほんとは怖くてたまらないのに、平気な顔でしゃべれる自分に栄誉賞を与えたい。
 歯がガチガチなるのを抑える。

(ッ!)

 私が自分の机に向かうごとに倉山さんの取り巻きたちのクスクス声が増していく。

(あ…)

 机に向かうとそこには、ペンで書かれたぐちゃぐちゃの文字が並んでいた。
 心臓に針が刺さったような痛みと悔しさがおしよせてくる。

(これでもまだ——いい方だよね)

 ハンカチで拭いた。
 水性だったようですぐに落ちたが、お気に入りだったハンカチが汚れてしまった。
 目頭が熱くなってくる。

(こんなことで泣くもんか——)

 倉山さんの方を見ると、

<<いい気味>>
 と嘲笑うようなココロの声が聞こえてきた。
 他のみんなは、見て見ぬふり。

 絶対、負けない。
 昔の私じゃないんだから。


        ****  ****  ****


「ねぇ、杠さん」

 昨日と同じ時間に倉山さんが声をかけてきた。

「今日こそ、放課後に資料室にきてくんないかな?
教えてほしいことがあるの」

<<来ないならもっといじめてやろうかな>>

(え…?)

 これ以上は正直、キツイ。
 あの後も倉山さんたちの取り巻きの仕業で色々ないじめがあった。
 でも、倉山さんの直接的ないじめはなかった。

(放課後いったらきっと、蹴られる)

 でも——……
 これ以上よりは、マシかもしれない。
 いじめをなくさせるために、なにかできるかもしれない。

「行きます」

「ん。じゃぁ、きてね〜♪」

<<楽しみにしてるから♪>>

 それまでに対処法を練っておこう。
 そう決意した私だった。


       ****  ****  ****


 放課後、資料室の隅。

 ドンッ!
 私は、勢いよく壁にぶつけられた。

「なに、するんですか」

「そーねぇ」

 そう倉山さんは考えるふりをした。

「最初だから殴るだけにしとこうかな」

 倉山さんがそういうなり、出てきた取り巻きに押さえつけられた。

「覚悟しなっ」

(ッ!!)

 殴られるかと思った刹那、

キィィィィィィィィン———

 と耳が割れるような高い音が響いた。

(あ、れ…?)

 痛くない? 殴られて、ない?

 私は目をスゥッと開けた———

 目の前には、殴る瞬間を写真に撮ったような景色。
 つまり、倉山さんが止まっている。

(は…!?)

 どういうこと?
 なんで景色が止まってるの?

 時計を見ると秒針が、“6”の所で止まっている。

「どうなってるの———?」

ゴォォォォォォォォォォォォ———

 私がそう言った言葉と一緒に、何かが落ちてくるような音がした。
 小さい頃乗った、飛行機の離陸・着陸する時のような音。

ガシャァァァァァァァァァン———

 そのあとに資料室の天井が崩れ落ちた。
 もちろん掃除をする回数が少ないため、埃が舞い、目をかすませる。

「……ッ?」

 声が出なくなった。
 なんでこんな非科学的なことが起きるのか?
 
 いや、ココロが読めるということも非科学的なのだが。

 そんなこととは比べ物にならないようなことが目の前にあった。

 黒い大きい物体。
 どっかのゲームに出てきそうな闇色の物体。

(悪魔———)

 最初に出てきた言葉は、それしかない。

「オマエハ、ナンダ?」

 低くこだまする声。

(あ……)

「アァ、オマエ!! “リティア”ノナカマカッ」

 一瞬おびえたような顔をした、悪魔。

「ソレトモ、“リティア”ニナルマエノヒトカ!」

(リティア…?)

 聞き覚えのない言葉。

(もしかして、これはドッキリなのかも)

 今の私を落ち着かせるためには、そう考えるしかなかった。

「…? ソレトモ、“ソノコト”ヲ自分デジカクシテイナイ馬鹿ナノカ」

「…い、意味分かんない。“リティア”とかなんとかいわれても私には関係ないんだから! なにこれ、ドッキリなの?」

「ソウナノカ。久シブリノゴチソウトナルナ」

(は…?)

「何言ってるの? これ、ドッキリとかなんかなんでしょ!? おかしいんじゃない!?」

「ドッキリナンダカシラナイガ、オレハオマエ食ウ。ソレダケダ」

 そういうなり、私をつまみ上げはじめた。
 悪魔の口っぽいのが、ガバッと開く。
 中は、何も見えないほど黒い。

「あ……」

「ンジャ、イタダキマス」

(誰か——助けて!)

 そう思った瞬間、

「ギャァァァッァァァ!!」

 悪魔が割れた。
 真っ二つに。

 真っ黒い霧のように消えていく。
 真っ黒い霧を背に、大きな背中が見えた。
 剣を持った、男の人が。


続く