ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 第一話 「私はココロが読めます。」 ( No.6 )
- 日時: 2010/10/11 14:07
- 名前: リコ☆ (ID: rD6rLP90)
*01 あの事件の前のことなんだけど。
いつもの朝。
うるさい教室の隅っこで私・杠 悠月は、いつものように本を読む。
みんなは宿題を忘れただの、昨日のテレビ番組を見忘れただのとバカみたいな会話をしている。
(ほんと、バカみたい)
なんでそんなに人が信じられる?
だってほら———
「この前さぁー、駅前のドラックストア言ったんだけどさー…」
と大きな声でしゃべっている女の子がいる。
そこらへんにいた同じグループの一人に目線を軽く合わせれば、
<<あんたの話、飽きたんだけどなぁー。だるー>>
というココロの声が流れ込んでくる。
(人は、結局そんなものだ)
そして私は、本に目線を移す。
———そう、私はココロが読める。
相手と目を軽く合わせれば、ココロが読める。
人は、ココロの中では嘘はつかない。私は、それを知っているから人を信じない。
友達も好きな人もいない。
(こんな力、欲しくなかったのにな)
時々思うこと。
(そしたらバカみたいに人を信じられて、楽しい生活ができたはずなのに)
———もう、今では遅すぎる。
「席に着けー」
ハッとした瞬間、先生の声がした。
みんなは案の定、急いで自分の席に座る。
(いけない。また考え事…)
本を机に隠し、前を向いた。先生とは、目を合わせないように。
そして、いつもの長い一日が始まる。
**** **** ****
「ねぇ、杠さん」
私がトイレに行く途中、ある人が私に話しかけてきた。
クラスの中心人物でもある———倉山さん。
ハデハデな格好で男をとっかえひっかえしているという噂が立っている。
(……?)
クラスの中で一番暗いといわれる私に何の用だろうか。
「あとで言いたいことがあるの。放課後に渡り廊下へきてくんない?」
倉山さんと目をあわせてみると、聞こえてくるのは——
<<……この子、いまいちダサいのよねぇ>>
体が一瞬こわばった。
思い出すのは、小学校の頃の思い出。
いきなり呼びだされて、体をけられるあの感触———
(思い出したく、ない…)
「嫌です。なんで放課後なんですか。今言えばいいじゃないですか」
自分でも、冷たく言い放っているように感じた。
私は、また倉山さんへ目を合わせてみた。
ギョッとしたような表情と、恨みがあるような表情が入り混じっている。
<<ムカつく……なにコイツ>>
(え……)
「もういい。来なくていいから」
<<今度からいじめてやる——>>
(え…?)
最後に倉山さんは、私にドンッとぶつかっていき、私は倉山さんの背中を見送ることになった。
**** **** ****
帰り道、私は倉山さんのことについて考えていた。
(どうしよう…)
あの呼び出しは、いじめるためではなかったのか。
そう考えながら、私は足を止める。
(結局、私をいじめることになってしまったようだけど)
そして、止まっていた足をまた動かし始めた。
ポツ、ポツと手を濡らす感触がした。
次第にその濡らし方は激しくなっていく。
(あ………)
雨が降ってきた。
上を見上げるとのっぺりと濃い雲が、空を覆っている。
今の私を表すように。
憂鬱の色が。
(傘、持ってきてない…)
自分の無能さに腹立てながら、足を進める。
肩を濡らす感触が気持ち悪い。
どうせなら全て洗い流してほしい。
今の状況も、ココロが読める現実も。全て。
続く